触れる唇
「………っ!?」
からだが、おかしい。
まっすぐにながれていたものがぼうそうする。
「っ!」
「―――っ」
流れが落ち着いた。
激流のようだった魔力が、清流のように落ち着き始める。
でも………。
「え、え………?」
今、その。
あなたのくちとわたしのくちが。
「やはりすぐには魔術を使えるようにはならないか」
なにを“ふむ”なんてのんきに言ってるの!?
「なっ…なんでそんなに落ち着いてるわけ!?」
「何か不都合があったか?」
「だって今、キスし…!」
怒りとか驚きとかいろいろ混ざって言葉にならない。
こ、この男…!
「凛から聞いていなかったか?君の魔力が暴走した際にはキスで制御するように、と」
「そんなの聞いてない!」
聞いてたとしてもごめんだ。
「大体どうしてキスなのよ」
「私が君の魔力を吸い上げるためだ。魔術を使いこなせない君のフォローということだよ」
「………」
ああ、混乱してる。
当たり前のことを言われて、どうしようもなく苛つく。
「絶っ対早く魔術が使えるようになってやる」
「それはいい心掛けだ」
ドキドキなんて、しないんだから。