It gives it. バレンタインっつーのは例えばチョコレートを溶かして固めただけでも手作りで。 女っての“手作り”にこだわる。 いくら料理がからっきしでも、コイツでも頑張るんじゃないかと勝手に考えていた。 好きなヤツのためであれば。(オレ様の憶測でしかないが、わかりやす過ぎる) なのに。 コイツが渡してきたものといえば、正直期待していただけあって文句の一つも出てしまった。 「おい、何だこれ」 「バレンタイン、だから」 ある種の恥じらいはもっているようだが、可愛げはない。 これも可愛らしいと言えなくはないが。 ずいっと差し出している。 板チョコ。 机の上に積まれているのは、手作りの方が多いだろう。 女子生徒からの…本命まじりな義理チョコ。 例えばコイツの手作りであれば、どんなにひどくとも食べるだろう。 「せんせい?」 「ま、とりあえずもらっといてやるよ」 「赤がいいんだって」 「あ?」 包みは確かに赤い。 「CM!知らない?」 「…見てないな」 というと顔を真っ赤にして。 「そういうことだから!日付が変わらない内にテレビでも見たらどうですか!」 そう言い残してバタバタと出て行った。 「CMねぇ」 “赤いチョコならハートが伝わる” 「なるほど。可愛いじゃねーの?」 口に入れたそれは、やはりとても甘くて。 酒の肴にもならないだろう。 だけどアイツの顔を思い出したりして。 「1ヵ月後な」 楽しみに待ってろよ?