「さよなら」
ねぇ、どうして。
やっと逢えた。
もう一度。
そんなに晴れやかな顔をしているのに。
「アーチャー…透けて、る」
契約は切れていたんだ、なんてぼんやりと思い出す。 魔力の供給がないから。
「お別れというわけだ」
体は、ぼろぼろ。
「うそ」
ふざけてる。
だって何度裏切られようと。
まだこんなに胸は痛いのに。
「“さよなら”なんて許さない。絶対言わせてあげないわよ!」
私に言ってくれた言葉。
私に触れた手。
嘘だなんて言わせない。
「…」
赤い騎士は困ったように笑う。
私を必要だと言って。
それだけできっとあなたをこの世界に留めてみせるから。
でも、行かないで、と素直に言えない。
こんな時まで私は馬鹿だ。
「アーチャー…」
泣かせっぱなしで還るなんてずるいじゃないか。
笑顔にできるのはあなただけ。
「…本当に君には参った。その言葉自体が魔術のようだ」
ふわりと、抱きしめられる。
感覚がすごく希薄で切ない。
「…そりゃあね。私はもう魔術師だもの」
「もう一度…今度は君だけの使い魔になろう」
ずっと願っていた。
聖杯なんて最初からいらなかった。
あなたを幸せにしたかった。