とある君との関係について
眼下に広がる金髪。
頑張っているのは伝わるが、隙間から見える文字はかなりの確率で不正解を綴っていた。
宿題だから終わればいいと言ってた気がするので、言及するつもりはない。
「何で私が付き合わなきゃならないんだか…」
「っち奢るって言ったらいいって言ったじゃないスか!」
ちょっと前に頼んだカフェモカはそろそろ底が見えそうだ。
喉が渇いてたから一気に半分ほど飲んでしまった。
「ケーキ食べたい」
「…好きなモノどーぞ」
財布が差し出された。
「まぁ、お金持ちですこと!」
「っちはまた金欠なんスよね」
「貧乏なめんな!まだ300円あるよ…」
明日さえ乗り切ればいいんだ。
バイトの給料を口座から出す自分を想像しながら、さも自分の財布のように支払いを済ませる。
席に戻ろうとすると黄瀬がいない。
いや、多分いるんだ。
見えないだけで。
また女の子に囲まれてる…。
「いつものことか」
ドリンクを追加注文して、離れた席に座って見守ることにした。
それも3秒で飽きて、携帯をいじっていると見覚えのある減り具合のカップがテーブルに置かれた。
「モテるってツラいっス…」
「私は食べ終わったら帰るから、宿題はゆっくりおやり」
「嫌っスよ。っちが一緒じゃないと」
「そうか。君の財布を空にしてやろう」
「それは困るっス!」
いちいちオーバーでウザいな。
「好きな女の子とカフェで勉強なんて憧れるじゃないスか」
「はあ?」
「っち、今ものすごい顔してるっスよ…」
そりゃそうだ。
色んな感情とか疑問とか溢れ出してるんだから。
「そもそも勉強にもならない宿題やってる姿を見続けるっていう拷問だしなあ」
「っちヒドイ!って、俺勉強してるじゃん!」
「間違えまくってるのを勉強って言ってもいいのかなって思うじゃん」
「え、間違ってるの?」
勉強にも自信だけはあるのか。
「そこを教えて欲しいっス!」
「やだよめんどくさい」
「っち冷たい!」
「明日のお昼奢ってくれたら協力してもいいよ」
「ホント!?」
「フランス料理フルコースとかさ」
「っち、愛が痛いっス…」
好きな女の子とか言われてもな。
私は君で遊ぶのは好きだけど、多分これは恋に発展しない。