手のひら同居人シリーズ・ムッくん編1



我が家には可愛い可愛い手のひらサイズの同居人がいます。

ちんもうなくなるんだけど」
「何言ってんの。まだ15本もあるくせに」

この小さい同居人はとにかくよく食べる。
ひたすらにスナック菓子を。
主にまいう棒を。
甘い物も好きみたいだけど、量や値段的に買いやすいのは断然スナック系。

「すぐなくなるしー」
「もうちょっと大事に食べてよムッくん…」
「次はこれ」
「ムッくん私出掛けるんですが…」

ころころと私の前にまいう棒ラー油トマト味を転がしてきた。
一人で開けられないんだよね、と最初は可愛くてデレデレしたものだが、私が外出している時にも食べていることを私は知っている。
それでも一緒にいる時は開けてくれと寄越すのだから、本当にムッくんたらかわい…!

「早くー」
「あ、ごめんごめん」

これ開けたら出掛けるぞ。
もうお菓子のストックもないし。

「それじゃあもう行くからね」
「うん」

…すぐになくなるな。






「ただい…ま」

間に合わなかった。

ちん遅い」
「ムッくんが早い」

玄関のドアを開けると、ムッくんが廊下を塞ぐように座り込んでいた。
彼はお菓子が切れると大きくなるらしい。
この驚くくらいの大きさが彼にとっては普通サイズらしい。
初めて見た時は本当に驚いた。
正直泣きそうになった。

「とりあえず奥に行こう」

跨いで通るのもはばかられるので、通路を塞ぐムッくんの隣にしゃがんで目線を合わせ話しかける。

「まいう棒」
「うんうんとりあえず動こうか…っ!?」

ガバッと抱きつかれ、身動きが取れなくなった。

「ムッくん!?離して」
「やだ」
「ちょっと」
「お菓子がないならちん食べる」
「えっ!?」

ムッくんの手が私の髪を撫でた、もとい避けた。

「ムッくん…?」
「いただきまーす」
「ええっ!?待った待った待った!歯が!歯が当たってるよ!?」

首筋に歯がたてられてる!
今のサイズのムッくんなら本当に食べられる気がする。

「人肉なんておいしくないよ!」
「大丈夫。ちんならおいしいって」
「いやいやいや!っ…痛い!」

マズイヤバイ!
と、バッグから買い物袋がはみ出ているのが見えた。

「ムッくんストーップ!これなーんだ!」
「ん〜?」
「まいう棒新作!ピリ辛肉じゃが味!」
「おお…おおっ!」

完全に注意がそっちに向いた。
…危うく死ぬところだった。
私の手から引ったくるとムッくんは一気に平らげる。
少しサイズが小さくなった。
ムッくんはお菓子を食べながら少しずつ手のひらサイズに戻るんだよね。

「さ、ジュースでも飲もう。喉詰まらせるよ」
「結構おいしい。もう1本」
「いやだからとりあえず移動を…」

目がヤバイ。

「私は飲み物持ってきたげるから、ムッくんはここで食べてなさい」

私がコップを片手に戻ると、ムッくんは更に小さくなっていた。