手のひら同居人シリーズ・ミドリン編2



『…の第8位は!!』

「!?」

いきなり部屋に響いた大音量に飛び起きる。

「私の眠りを妨げるのは誰だああああっっ!!」

ベッドを飛び出しテレビに向かうと、ミドリンがリモコンに乗っていた。
それを発見する頃にはすっかり音量は小さくなっていた。

「…おはよう」
「…あ、ああ」
「………」
「………」

悪いことをした自覚はあるようだね。

「おは朝くらい見なくても死なないよ」
「人事を尽くして天命を待つのだよ」
「私が自然に眠りから覚めるのを待て」

わざと大きくしようとしたわけじゃないんだろうけど…休みの日くらいゆっくり眠らせてよ。

「…おやすみ」

ああ、お布団の中は天国だ。





「………」

「んー…?」

何かが肩に触れている。
揺り動かしている。


「ミド…りまくんっ!?」

緑間くんの大きな手が、私を揺り起こしていた。

「なんで!?なんで大きくなってんの!?」
「テーピングが切れたのだよ」
「それはわかっているのだよ!」

“本日のゴール”はまだ設置してないのに何故切れる…。

「あれ?」

部屋を見回すと何か違和感を感じる。

「ねえ緑間くん…なんか…おかしくない?」
「わけがわからないのだよ」
「私の目を見てもう一度言ってみようか」
「…わけが、わからないのだよ」

目が泳ぎまくり。

「人が寝てる間、何してたのかな?」

違和感の正体。
それはちょこちょこと物の位置が変わっていること。

「何も…」
「正直に言ったらテーピングしてあげるよ」
「別に困らないのだよ」

私は知ってるよ。
テーピングがほどけたままだとソワソワしていることを。

「まあたまには大きい緑間くんと一緒に過ごすのもいいか」
「これが普通サイズなのだよ」
「はいはい。それじゃあ行くよ」

まずは顔でも洗いますか。

「なんだ、出掛けるのか?」
「お望みの代物が何だか知らないけど、部屋を荒らされちゃたまりませんもの。買い出しに行きますよ」

また私の部屋に倉庫のごとくヘンテコな物が増えるわけだ。
いや…私と彼の部屋だ。
全部捨てたとして後日再び買い求める羽目になるのは避けたい。
同居人の為、多少は目を瞑りましょう。