手のひら同居人シリーズ・青峰くん編1
我が家には可愛い可愛い手のひらサイズの同居人がいます。
「青峰くん、人が必死に課題をやっている視界に入らないでくれるかな」
ノートを埋めていく脇で、超リラックスモードの彼が恨めしくて仕方がない。
「俺の勝手だろ」
「私の家だよ」
つんつんとペンでお腹をつついてみる。
「やめろ」
「文句があるならこれでどうよ」
今度は指にして、頭を撫でてみる。
「やめろって」
「えー青峰くんワガママだなあ」
「誰がワガママだって?」
声が上から降ってきた。
「な…っ」
「で、誰がワガママなんだよ」
「アンタでしょおバカーっ!!テーブルに乗るんじゃありません!」
「んだよ、チビの時は何も言わなかったじゃねぇか!」
「小さきゃ許すよ!平均身長よりもデカイのに、テーブルに乗るんじゃありません!!」
青峰くんは普段手のひらサイズなのに、突然普通以上の男の子サイズになる。
切り替えのタイミングがわからなかったけど、未だに微妙にわからないけど、バカにされた気に食わんと思うと大きくなるらしい。
青峰くん曰く、大きいのが普通サイズだそうな。
「ったく、ぎゃあぎゃあうるせぇな」
「えっちょっ」
やっとテーブルから降りたと思ったら、ソファに押し倒されてしまった。
陰って青峰くんの肌が更に黒く見える。
「ど、どういうつもり」
「黙らせる」
「はあ!?」
どこぞの犯人のごとく口でも塞ぐ…つもりならまだいいかな、勝てる気しないけど。
確かに塞ぐんだろうけどそれって手じゃないよね顔近付いて来てるもんね!
「あお…」
ぐー、と間抜けな音が響いた。
「腹減った。メシ」
「缶詰でも食べてれば?」
襲ってきた人間に、未だ私の上に覆い被さる人間に何故メシなど用意しなければならないんだ。
「何だと?」
何で逆切れしてくるんだろう。
ここまで悪いのは全部青峰くんじゃない?
「…そんな態度なら作ってあげません」
自分でも驚く程低い声が出た。
青峰くんがふてぶてしい表情から一変する。
「な、なんでだよ」
「わからないの?」
のそのそと青峰くんは私の上から退けてソファに座った。
私も起き上がって隣に座る。
「…」
「何…んっ!?」
またやられた!
「あのねえ、いつもいつもキスすりゃ許されると思って…っ!」
「許すだろ?」
「許さない!今日は許さない!」
そうだ今日こそは!
「だったらどうすりゃいいんだよ」
「謝れば?」
全く、どうしてこの子はそんな簡単な事ができないんだろう。