殺してあげようか?



皇の間へ急ぐ。
それは同時にベナウィが消えて行った方向。



「…はぁっ。え………」



床に転がるのは、皇であったもの。
それを見下ろしていたベナウィがゆっくりとこちらを向いた。



「あなたが先にこちらに来ましたか」

「ハクオロさんを待ってたってこと?」

「いえ…待ってはいません。皇が果てた今、戦は終わったと皆にお伝えください」



血塗れた剣をベナウィは自身に向ける。



「なに、する気?」

「皇は私が手にかけました。私も共に消えるべきです」



何を言う?
その目はあまりにも迷いがなくて。
この人らしいといえばそうなのか。



「殺してあげようか?」

「は?」

「あ………」



自然に言葉が出た。
私のものではないように。
戦の喧騒が遠く聞こえる。



「本当に馬鹿…」

?」

「どうして死ななきゃいけないのよ」

「私はこの國と共に死ななければいけません」

「どうして…っ!」



こんな押し問答に意味は無い。
喉が痛み、目の前の姿が滲む。



「新たな國を支えるくらいの気概を見せてみなさいよ!」



死なないで。
死なないで。
生きて。
生きてみせろ。



「この私に生きろと言うのですか?」

「そうよ!!」



突然肩を叩かれ、見上げればハクオロさんがいた。



「お前には最後まで見届ける責任があるだろう」

「私に生き恥を晒せと?」



涙がいっぱいに溜まった目で睨みつけ、頷く。
ベナウィはハクオロさんに頭をたれた。


ハクオロさんを皇と認めたということか。
歩き出した二人の後を、涙を拭って追う。



戦は終わった。