すべてはあなたのために 「はあ…」 読んでしまいたい。 しかし、今日既にそのせいで寝不足だ。 また明日も早い。 なのに夜更かしなど、自殺行為。 「………」 読みたい。 寝たい。 でも。 「読んでしまわれてはいかがですか?」 「ロノウェが明日、魔法で眠気を何とかしてくれるなら読む」 「私にはお安いご用です」 しかし悪魔というのは。 ことこのロノウェというにんげ…悪魔は。 「私は悪魔ですのでお約束はできませんが」 気まぐれなのだ。 「じゃあ寝る」 「よろしいのですか?」 良くはない。 物語はクライマックス。 あともう少しで終わる。 「ふふん、悪魔の誘いになんか乗りますか」 「ではあなた様は、我慢ができると?」 「我慢、する…」 「本当に、我慢できますか?」 「くどいっ!」 私が怒ると楽しそうに笑う。 その心理は理解できる。 だって。 「私だって本当はSなんだからねっ!」 「ぷっくっくっ。ではおわかりでしょう、この気持ちが?そのような態度を取られると益々口を出したくなります」 わかる。 この上なくわかる。 私だって、こいつが相手でなければ。 「で、いかがなさいますか?」 ドSだ。 優しそうに気遣うようにするから質が悪い。 「読まないっ!寝るっ!よってその眠気が覚めそうなコーヒーも結構!」 普段は紅茶を淹れるくせに、これみよがしに…。 「それは残念です。では」 「ええ、ええ、私も残念だわ」 適当な返事をする。 「あなた様が心地良い眠りにつけるよう、あの本を朗読致しましょう」 ブチッと、何かが切れる音がした。