習性 目の前をひらひらしたものが横切れば。 それを掴んでしまうのは最早本能。 「…何か?」 「ベ、ベナウィ様!?」 私が掴んでしまったのは、ベナウィ様のマントだった。 「ご、ごめんなさい、私っ」 「様付けは必要ないと言っているでしょう」 「ごめんなさい…」 「あなたが楽しんでくれたのであれば構いませんが」 「はい?」 ベナウィ様の視線の先には、パタパタと揺れる私の尻尾が。 「う、わ、ああもうっ!」 慌てて隠そうとしたけれど、私にはマントも腰布もない。 恥ずかし過ぎる。 「笑わないでくださいよ…」 「可愛らしいと思ったものですから」 「えっ!?」 ベナウィ様が、私のことを、何と? 「もっもう一回!もう一回言ってくれませんか!?」 「可愛いですよ、あなたは」 「その言葉だけで一生生きていけますっ!」 「これだけでいいのですか?」 「え?」 そう言うとベナウィ様は綺麗に微笑んで。 「あなたには伝えたい言葉がたくさんあるんですよ」 と、おっしゃってくださいました。 「そんな!私なんかにもったいない!!」 「あなたでなければ意味がありません」