壊れ物なんかじゃないよ 「ベナウィはね、優し過ぎるよ」 「もっと厳しくして欲しいということでしょうか」 「…遠慮させてください」 ベナウィがクスリと笑う。 なんていうか。 笑う時も…上品っていうか。 「そう、ベナウィって武人なのに品がある感じだよね。落ち着きがあるからそう感じるのかなぁ」 「そうですか?」 「うん。武人っていえばさ、やっぱクロウやオボロとかね。ちょっと荒い感じがするかなーって」 「私にも荒い部分はあるでしょう」 ああ、だからか。 「ねぇ」 「はい」 「私は、壊れ物なんかじゃないよ」 ベナウィの面食らった顔といったら。 言った私が恥ずかしくなるじゃないか。 「もっと…触れて欲しいとか、思う、でしょ」 だって、あなたのことがすきなんだから。 「それなのに、いつも優し過ぎる」 真剣にベナウィを見つめてやれば。 「馬鹿なことはやめなさい。明日は早いんですから」 「え?」 ぎゅっと抱き締められて。 「ねぇ、ベナウィ。どういう意味?」 「何でもありません。忘れてください」 疑問は消えなかったけど。 いつもより強い腕の力に満たされた。