至近距離



「ベナウィー、そろそろお茶を飲み切った頃でしょ。新しいの入れてあげる」

…。気持ちは嬉しいですが、そう水分を取っても」

「エルルゥが暑い時には水分をちゃんと取ってくださいねって言ってたよ」



湯飲みを下げようと机に近付く。
それを取ろうとした時。





「ん?」



何の気なしに顔を上げて後悔した。
ベ、ベナウィの顔が…近い。



「なっ…ななな何!?」

「いえ、アルルゥ様が貴方を探していたことを思い出したので」

「あっ、そう、あ、ありがとっ!」



バタバタと部屋を後にする。
廊下の角を曲がったところで、背中を壁に預けた。
ずるずると座り込む。



「うぅ…情けない」



ベナウィは何とも思ってないんだから、こんな反応してどうする。



「あ、湯飲み忘れたし…」



あとはエルルゥに頼もう。
本当はお茶汲みだって、ベナウィ相手なら率先したいものだが。



赤い顔。
彼女は、顔を真っ赤にして。



「可愛いですね」



実は、確信犯だったりして。
だけど手は、出せなかった。