腕に力と想いを込めて
その姿を見た時、なんて頭の良さそうな男だろうかと思った。
だけど、そのおかげで尚更頭に血が上って。
私は誰よりも前に出ていた。
「あんたが侍大将?」
「、下がれ!」
悪いけどハクオロさんの声には耳を貸せない。
「ええ…ベナウィと申します」
「礼儀正しくどうも。私は」
「何か御用でしょうか」
「あんたは自分の意思で戦ってるの?」
ぴくりとベナウィが反応した。
「自分の皇がどれだけ馬鹿なヤツか知ってるわよね?」
「…私は國のため、御心のままに戦うだけです」
「そう…あんた馬鹿だわ」
悔しい。
他人事なのに。
しかも敵だっていうのに。
「…聖上の命により、貴方たちを排除させていただきます」
「、下がるんだ」
「はい…」
ぎりり、と弓を握る。
爪の跡がつくくらいに。
ただ、悔し過ぎてこぼれそうな涙を堪えた。