セピア色から零れる涙 最近の関係はいい感じ。 先生のお家にお邪魔して、一緒にご飯を食べる。 恋人というには遠いかもしれないけど、先生に一番近い存在かもなんて自惚れてもいいと思う。 「先生、何かCD聴いてもいいですか?」 今日もおいしいご飯が終わり、先生は食器を洗ってくれている。 いつもは私がやるんだけど、あいにく指が荒れていて。 ハンドクリームも忘れたと言ったら、ちょっと怒られた。 そして今日は先生がやることになったのだ。 「おう、好きなのかけろ」 「はーい」 CDラックに手をかける。 タイトルじゃどんな曲だか全然わかんないよ…。 「適当に抜いてみるか…あっ!」 引っ掛かったと思ったら、全部飛び出て来てしまった。 なんて器用なんだろう、私。 「あーあ…」 幸い、床に落ちたのは数枚。残りは絶妙なバランスで死守した。 少しでも揺れれば、バラけるな。 それを何とか元に戻す。 幸い、先生にはバレていないらしい。 あとは残りを拾って何事もなかったかのようにするだけ! 「………?」 CDを拾おうと視線を落としたら。 棚から少しだけ飛び出しているものを発見した。 本当に少しだけ。 角が。 好奇心に勝てず、私はそれを引っ張ってしまった。 薄くて、少し固い…。 「写真…?」 写っているのは、キレイナオンナノヒト。 「ちょっ…お前、何見てんだ!」 「あっ」 いつの間に洗い物を終わらせたのか、写真を取り上げられてしまった。 「………」 「………」 気まずい沈黙。 「あっはは、女の人の写真を持ってるなんて先生も可愛いところあるんですねぇ。  先生モテるんだから、彼女の一人や二人いますよね」 "いる"の? "いた"の? どうしてそんなに切ない顔をしてるの? 「………」 黙ってないで、何か言ってよ。 「あ、そういえば私宿題があったんだ!今日はもう帰りますね」 笑っていられる内に去ろう。 あと1秒だって惜しい。 「そうか…気をつけて帰れよ」 「………」 時間が、止まった。 な…んで、引き止めてくれないの? その写真の人は…。 「…はい。お邪魔しました」 早足で帰ろう。 泣くのは、家に着くまで我慢。