もう離さないから いつもは翻弄されてばかりだけど。 時々この人の弱さを垣間見て。 どうしようもなく愛おしくなる。 抱き締められて香る煙草の匂い。 理事が今何を考えているのか、私にはわからない。 だけど。 「大丈夫ですよ、理事」 もう離したりしませんから。 「…このシチュエーションで理事って呼ぶのかよ」 「え?理事は理事でしょう?」 「たまには名前で呼んでよ」 切なそうに言う。 この人にだって弱いところはある。 「…葵、さん」 気恥ずかしくてそっと呟くように呼んだ。 葵理事の腕の力がまた少し強くなって。 苦しかったけど、耐えようと思った。