レイニーデイ



雨が降ると頭痛がする。
…便利だ。
この人は必ず私を心配してくれるから。
心の中ではまたかと思っているかもしれない。
それでも私は構わない。

「とはいえ…頭痛で目が覚めるってのは気分最悪だなあ」

気だるい体を起こす。
外から雨音が聞こえるけれど、聞かなくてももう知っている。
この痛み方は受話器を持ちっぱなしの肩凝りからくるものとは違うし、書類と睨めっこして勝ち目のなさを感じた時ともまた違う。
うんざりしながらカーテンが閉まった窓を見ていると、隣がもそもそと動いた。

「おはよ、ベルナルド。もう少し寝てられるよ」
「おはよう。が起きてるのに寝ちまうなんて勿体ない」

腕を引かれて抱きつかれた。
素肌に髪が当たってくすぐったい。

「雨?」
「そう。残念ながら」
「動けそうか?」
「まあ…なんとか」

今の状況で休むわけにはいかない。
本気で目を回して倒れる人間が出かねない忙しさだ。
そんな中ベッドでゴロゴロしてるなんて。

「辛くなったらいつでも言えよ」
「うん」

薬はいつの間にか効かなくなって、医者にも匙を投げられた。
雨季があるわけでもないし、そこまで雨が多くないことが救いだ。
いつか砂漠に住むのもいいかもしれない。

「向こうの人の格好、似合うかもね」

うさんくさい商人って感じで。

「ん?」
「本気で嫌になったら、砂漠にでも逃げ出そうかと思ってね」
「へぇ…それはロマンがあるね。妖艶なダンスでも見せてもらおうかな」
「え、やだ」
「即答とはつれない」

ベルナルドが私の髪に指を絡める。

「私がダンスの才能に砂糖一粒ほども恵まれなかったこと知ってるでしょ?」

ああ、みんなの残念な表情が蘇る。

「ん?別に構わないよ。俺の上で踊ってほしいんだ」
「幹部筆頭、みぞおちにでもちょっと力を込めてよろしいかしら」
「ハハハ。いやだな、レディ」

その言葉を撤回したりしないのか。
微塵も悪いと思ってないから、だよね。

「さて、コーヒーと朝食でも…ベルナルド?」

向き合った状態から反転してベッドを出ようとすると、巻き付いていた腕が引っかかった。

「なーに?」
「いやあ、その…」

少し力が強くなって、肩口に顔を埋められる。

「何朝っぱらからそんな気になってるの…」
「悪い。想像したらすごく良さそうできちまった…」
「昨日はそんなに不満だったの?そういうことなの?」

っていうか、どんだけそういうプレイが好きなんだこの変態め。

「まさか。昨日だってとても可愛かったよ。また新たな発見もあったしね」

思い出させるように、ベルナルドの手が体を這う。

「………っ」
「まだ時間はあるさ」

働き過ぎかとちょっと心配してたのに、意外と元気じゃないか。
怒るべきか、喜ぶべきか…まあいいか。

「ベルナルド」
「ん?」
「どうせするなら、頭痛も忘れるくらいにしてよ」
「おまかせあれ」