幸せに包まれておやすみ
向きを変えて、体勢を変えて、音楽を聴いてみたりしても眠れない。
原因はわかってる。
寂しいからだ。
「出ないのはわかってます。ちょっとだけ」
履歴が残って心配されるかもしれない。
それでも、電話を掛ける、繋がらなくともそれだけで安心できる気がした。
ベルナルドの携帯をいじって、私が好きな曲が流れるように設定してあるし。
『?』
「えっ?ベルナルド!?」
ぼんやり耳を傾けていたら、突然ベルナルドの声が聞こえた。
『ああ、そうだよ』
まさか出るなんて思わなかった。
嬉しいけど、申し訳ない気持ちにもなる。
「ごめん、起こした?」
『いいや…実は仕事が終わらなくてね』
「ええっ!?仕事中なの!?」
『そう。無能な男だと笑っていいよ』
笑えるはずない。
そんなんじゃないって知ってるもの。
「お疲れ様…無理、しないでね」
既に常人は無理の域なんだけど。
『グラーツェ。そんなことより、こんな夜更けにどうしたのかなお姫様』
「眠れないから電話しちゃった」
仕事中の相手に対して、のんきなことだ。
でも、電話に出てくれて本当に嬉しかった。
「ベルナルドがいないと自制がきかないの。ネットをしたり、深夜番組を見たり意味もなく夜更かししちゃう」
『俺がいると早く眠れるの?』
それはちょっと違う。
ベッドには早く行けるけど。
「そうかも。一人だとベッドが広いし。早く寝る理由も、よくわからない」
次の日のためっていう、当たり前の理由があるんだけど。
「あのね、わがまま言ってもいい?」
『ん?』
「私、寂しいよ」
『今すぐ帰って抱き締めてキスをして、可愛いに溺れたいよ』
「ありがとう」
なんだか、それで満たされてしまった。
小さく笑ってしまう。
『?』
「もう大丈夫みたい。お先に寝るね。ごめん」
『謝らなくてもいいさ、いい夢を』
「ありがとう。それじゃあ…おやすみ」
『おやすみ』
少し名残惜しかったけれど、気持ちはとても満たされた。
眠りに入るのにほとんど時間は必要なかった。
「ん…?」
アラームを掛け忘れたのかな。
それともまだ早かったり…あれ?
「………え?」
体に何か絡んでっていうか、寝息がって…!
「ベッ…!」
叫び出しそうになったのを必死で堪えた。
カーテンの隙間から光がさしているから、今は夜じゃないことは確か。
ベルナルドが、私を抱き締めて眠っている。
一体いつ帰って来たんだろう。
「…おかえりなさい」
「…?」
「ごめん、起こした?」
「フフ、それ数時間前も聞いたな」
「あ、そうかも…」
「ただいま。愛を表現したいのは山々なんだが、もう少し寝かせていただいてもいいかな?」
「もちろん!」
「グラーツェ…」
一瞬抱き締める力が強くなったと思ったら、すぐに寝息が聞こえてきた。
「お疲れ様。おやすみなさい…」
今日はゆっくり寝てしまおう。
幸せに包まれながら。