おねだり 「あっつい…」 「あっちぃ…」 「暑いねえ」 「「嘘だっ!!」」 「え?」 思わず時任とハモった。 うん、嘘。 絶対ウソ。 涼しい顔してるじゃないさ。 見よ、この私と時任の状態を。 「俺だって暑いよ」 「久保ちゃんはまだまだ余裕だろ」 「だよねえ、買い出しは久保ちゃん1人で良かったんじゃないの」 「2人とも冷たいなあ」 久保ちゃんが私達に抱き付いてきた。 「ギャー離れろ!」 「くっつくなーっ!」 「ハイハイ」 ヤバイ、離す気はないコレ。 暑い!汗が! 早くコンビニについて! 「アイス食べたいよー」 「食う。スゲー食う」 「腹壊すまで食うなよ、時任」 「食わねーよ」 背中が暑い。 「久保ちゃん、ダッツね」 「ん?」 「私、バーゲンダッツで」 「かわいいおねだりしてくれたらイイヨ」 「え、じゃあいいや、カリカリくんにしよ」 久保ちゃんの要求ってめんどくさそうだし。 「えーそんじゃおねだりできたらアイスね」 「ええっ!?」 買ってもらうための課題になってる!? 「俺もやんの?」 「モチロン」 「へいへい」 やるんですか、時任さん。 時任は足を止めると久保ちゃんの首に腕をまわして…。 「アイス、買って?」 あれ?かわいい。 なんかショック。 「合格」 「よっしゃ」 これはかなりレベル高い。 私の性格上、こんなん無理。 「私帰るわ。先に帰って涼んでるわ」 「ダメ」 「ぎゃあっ!重い!暑い!」 久保ちゃんに後ろからのしかかられた。 くそう…!! 「はーなーしーてーよー!」 「俺先行くからな」 「えっ!時任裏切んの!?」 「裏切ってねぇだろ。つーか、暑い。んじゃお先」 「すぐ追いつくよ」 「追いつけない!」 「ん?もっとくっついてたい?」 さらにぎゅ、と力が強くなる。 「んなわけない!や、だ、よ」 「そっか」 「っ!?」 やっと離れてくれたと思ったら、両手で顔を包まれた。 「おねだりしてごらん?」 「なっ…なっ…」 余計に暑さが増してく。 アイスなんかどうでもいい。 この状況から逃れるにはどうしたらいい。 どうしようどうしよう。 久保ちゃんは許してくれるタイプじゃない、なあ…。 もうどうにでもなれ。 腕を伸ばして抱き付いて、顔を隠した。 「…アイス、買ってよ」 「仕方ないなあ」 背中に腕がまわってきた。 悔しい。ああ悔しい。 「っていうか、あっつい…」 「もっと暑くなる?」 顎を持ち上げられた。 「いや、いい加減クーラーの恩恵を受ける」 「つれないねえ」 「ダッツ選び放題にしてね」 「ん?もっとすごいことしてくれるの?」 「すいませんでした」