名前を呼びますので、できれば
「ん………?」
「あ、起きちゃった」
「センパ…って何スかそれ!?」
「んーあと1分、いや10秒でもいいから寝ててくれたら良かったのになあ」
先輩は細い指に似合わない太いマッキーを持ってスタンバっていた。
油性じゃないスか、それ…。
「きっと芸術作品になってたよ」
「怖いこと笑顔で言わないでください。これでもモデルなんスから、写真ならいつでもどーぞ」
「言うねえ。でも私カメラ持ってないよ。携帯くらいか」
「いいじゃないスか、携帯で。俺を待ち受けにしたりとか」
「ないわ」
先輩、ツッコミが鋭いっス。
「じゃあ、俺が先輩を撮って待ち受けにする」
「もっと美しいモノを撮りなさい」
「俺、先輩のこと好きだからいつでも見たいんスよ」
「この高さから携帯落としたらご臨終だよねえ」
「ちょっ!俺本気なんスけど!」
顔が怖い!
「写真が?」
「写真もだけど好きなのが!」
「…いつも聞いてるし」
顔を赤くしてそっぽを向くそんな姿が可愛くて仕方がない。
「そうなんスよ。好きなんスわ、俺。さんのことが」
ピタリと先輩の時が止まった。
「…調子に乗るなーっ!!」
「わー!?落ちる!!さんマジで落ちるから!!」
「そう呼ぶな!!」
「だってせっかく可愛い名前じゃないスか、さんって!」
「落とす」
「うわーごめんなさい!マジでスンマセン!!」
ホントは俺のことも名前で呼んでほしいって言ったら、もっと怒られるかなあ。