目が離せない 彼の想いは、実はこれくらい真剣で熱いものだったのだろうか。 「まだ何か用スか、緑間っち」 「あの大きい人?」 「っ先輩!」 「試合お疲れ様」 「…見てたんスね」 何のことかしら? 「黄瀬くんが見に来てって言ったんじゃない」 「いや、じゃなくて」 「ちゃんと頭拭きな、風邪ひく」 彼の首に掛けられたタオルを引っ張って、頭に被せた。 「うわっ!」 頭から水を被ってたんだなあ。 こんなに濡れちゃって。 「髪柔らかいね」 「………」 「カッコ良かったよ」 「………」 本当は、途中から試合なんてどうでも良くなったの。 その真剣さに、魅せられて。 「あのさ。黄瀬くんて、私のこともあれくらい真剣に想ってくれてるの?」 ただの、自惚れか。 「違うっスよ」 そっか。 「だよねえ」 「先輩とバスケは別物っスから」 「…まあ、一緒にされても困るけど」 「…こんな時に言う先輩が悪いスからね」 「え」 大人しくされるがままだったのに。 突然。 「………っ!?」 キス。 されてしまった。 「俺バスケも負けないけど、先輩にも負けないスよ」 「はあ!?」 わけわかんない! 「にしても先輩変わってるっス」 「何が」 泣いたあんたを慰めろって? それとも空気読めよって? 「私は何も見てないし。黄瀬くんが…」 「俺が?」 「か、か、カッコ良かったこと以外は」 「さっきはあっさり言ったくせに何でドモってるんスか!」 「うっさい!」 私は器用じゃないの。 ありきたりな言葉しか浮かんでこない。 そんなので、慰めなんて。 君が泣いてたなんて。 そんなの。 知らないよ。