引き際ってものも大切じゃない? やっぱり男は紳士的に。 スポーツマンシップも大事。 取り乱すヤツほどみにくいもんってない。 炎の球もホームラン!? 「陛下っ、よけてくださいっ、よけてっ!」 ギュンターの声と、ガツンと鈍い音で我に返る。 戦況はやっぱり不利。 相手はプロじゃないか。 綺麗に一撃一撃ヴォルフラムは剣を振るう。 「お前のスピードじゃ怖くないねっ」 「なんだと!?」 そう言って有利は盾を捨ててしまった。 「ゆ、有利!?」 「ああもう見ていられませんよ、コンラート。早くたおるだかオマルだかを投げて差し上げて」 私も同じ気持ちでコンラッドを見上げたが、彼は冷静に指摘した。 「まだです。陛下はヴォルフラムのリズムを読んでます。基礎のできた模範的な攻撃だからこそ、次にくるコースが予測できるんだ。 ほら、かろうじてだが剣で止めている」 た、確かに。 見ているこちらとしては気が気ではないが、有利はちゃんと戦えていた。 そして何度か受けた後、バットのように剣を振りぬいた。 「うっそ…ホームラン」 「……ひゃっほーう」 ヴォルフラムの剣は見事打たれたのであった。 けれどそれでも終わらないのがヴォルフラムという人らしい。 「な、何あれ!?火!?火の玉!?」 「ヴォルフラム!陛下はまだ魔術について学ばれていないのです!自分が負けたからといって、得意の炎術を持ち出すのは」 「ぼくは負けたわけじゃないっ」 負けたじゃないか! 「引き分けもなしだ。どちらかが戦えなくなるまで続ける」 「ばっかじゃないの!?…っ!?」 決闘ってのは割って入るもんじゃないけど、そんなのもう関係ない。 自分が行った所でどうなるわけじゃないが、有利の所に行こうとして腕を掴まれた。 「グウェン、ダル…」 「真偽を見定めるいい機会だ。あれが本物の魔王だというのなら、ヴォルフラムごときに倒されはしないはず」 「何言ってんの!?こっちに来たばっかで、魔法だって私たちの世界にはないのに勝負になるはずないでしょ!?」 「魔力は魂の資質だ。お前たちが真の魔王だというのなら、盟約も知識も追い付かなくても、あらゆる魂が従いたがるはずだろう?」 そんなんで使えるなら今すぐ私に魔法を使わせてくれ。 振りほどこうにもグウェンダルの力は強く、抵抗するだけ無駄だと教えられる。 「炎に属する全ての粒子よ、創主を屠った魔族に従え!我が意思をよみ、そして従え!」 「有利!!」 危ないところで有利はよけた。 いや、正確には転んだんだけど。 「グウェン、障壁を解け。でなければお前を斬ってでも、ヴォルフラムを止めに行くことになる」 「私を斬ってもだと?どこまで本気なんだ、コンラート」 「全て本気だ」 コンラッドは自分の剣を抜いて、グウェンダルに切っ先を向けている。 言葉通り本気だろう、だってこんなにも空気が違う。 ちらりと有利の方を見ると、とんでもないことになっていた。