まぁ今時男同士でもアリっていう風潮…だっけ!? 異世界の文化ってなんて難しいんでしょう。 あれよあれよと求婚成立、決闘の申し込みまで成立してしまうなんて。 何をやるにも説明を聞くべきな気がしてきました。    レッツ プレイ ジャパニーズスモウレスリング! 異文化って怖い。 本日は有利とヴォルフラムが決闘です。 昨日は泣きそうになってたくせに、会場に現れた有利は元気そうだった。 「…ね、コンラッド。有利、勝算あるのかな?」 隣のコンラッドに聞いてみる。 当事者でない私はもちろん観客。 ツェリ様から一緒に観ようとお誘いを受けたが、断らせていただいた。 だってまだ決まっちゃいないけど、同じ魔王なんだし、人事じゃない。 「あるみたいですよ」 ふーん、と見ていると有利が地面に円を描いた。 そして服を脱いで…。 「え、ちょっと、有利ってそういう趣…」 「相撲とは、男と男がまわしいっちょでぶつかり合う超重量級格闘技だ」 あ、相撲か。 なるほど、相撲なら日本ならでは。 ヴォルフラムに負けるはずがない。多分。 「ふざけるなッ!そんな野蛮で淫らな競技を僕に挑むというのか!?」 でもヴォルフラム、あんた昨日何でもいいって言ったよ。 「あたくしはぁ、その競技ぃ、だーいすきーぃ」 ツェリ様は美少年同士の相撲でなくてもそうおっしゃるだろうか。 「みあってはっけよいとか説明してもわかんないだろうし…じゃあさっきのラッパを始めの合図にするか。  いいな、一回きり。ガチンコだかんな、ヴォルフラム…さん」 …有利、勝つよね? なんて心配する必要はなかった。 高らかに開始の合図が響いた後、勝負は一瞬でついてしまったのだから。 「…っ、有利、よくやった…!」 ころん、と投げられたヴォルフラムがあまりにもおかしく…可愛くて、吹き出しそうになるのを懸命に堪える。 ギュンターと有利はハイテンション。 が、王子様は懲りていなかった。 「こんなバカな勝負があるか!いいか、お前!お前はこの国の王になるつもりなんだろう!?だったらこの国の方法で勝負をしろ!」 だったらはじめからそう言えばいいのに。 ヴォルフラムはきゃんきゃんと小型犬のように吠え立てると、剣を持って来させた。 げ、そんな勝負出来るわけないでしょうが。 「ちょ、ちょっと…」 思わず口を出しかけて、有利が冷静なことに気付く。 「もしも俺が魔王になったとして、あ、万が一の話だよ万一の。そうなったとしたら、あいつは味方になるんだよなぁ」 コンラッドと話している、有利。 なんでこの局面でそんな話が出来るわけ? 「有利…?」 「正直勝てっこないけど、負けたとしても一勝一敗で引き分けだろ?だから多分大丈夫」 「あっそ…」 コンラッドが剣と盾を取りに行ったので、私はその場を離れることにした。 異世界で偶然出会った日本人の男子高校生。 勇気あるなぁ。 ふと、有利を見るとコンラッドから何か渡されているようだった。 綺麗な青い石。 「…懐かしい」 驚いてまた勝手に動いた口を塞ぐ。 今、私何て言った? うらやましい、とか。 私も欲しい、とかでなく。 “なつかしい” だなんて。