抱き締めてくれたあなたは。 なんと頼もしいことか。 ぬくもりに安堵して。 この世界に来て初めて私は泣いた。    ぬくもりは生きているという証 「無事で良かった」 「………」 コンラッドが安心させるように私の頭をなでる。 泣いてるってバレてる。 だって怖かったんだ。 剣が自分に振り下ろされるのが。 “死ぬ”っていうことを本当に感じて怖かったんだ。 どうしよう、恥ずかしくて顔を上げられない。 そんな私を察してか、コンラッドは有利に声をかけた。 「ところで、ユーリ陛下。それを何に使うつもりだったんですか?」 「えーと、棍棒がわりに」 「まさか、アーダルベルト相手に一戦やらかすつもりだったんじゃ…」 「だってみすみす殺されるのヤだもん」 コンラッドの腕の中でこくこくとうなずくと、彼はもう大丈夫と判断したのか体を離した。 「…あーもうっ、ヴォルフラムの時とは話が違うんですよ!?あいつとヴォルフじゃ格が違うってのに」 「悪かったなっ、格が違って!」 「大丈夫、ヴォルフラム?」 顔色は良くない。 「ふん、お前たちに心配される筋合いはない」 「だったら心配しないけどさー」 「こいつは自業自得です。勝手に陛下をこんな所まで」 自分達が頼んだことにして、有利が話題を切り替えた。 「それより、何でこんなに早く来てくれたんだ」 「俺としては遅過ぎるくらいだよ。国境近くで交戦中だったんだけど、俺達の隊に従ってた骨飛族が仲間の窮地を聞きつけて。  で、その場をグウェンに任せて、ここまで駆け戻る途中でヴォルフラム達と…」 あれ? 「あーっ!コッヒー!」 私達のために儚い命を散らしたコッヒーの存在を思い出した。 「可哀相にコッヒー…俺達のために自分の命を…」 「ああちょっと陛下、埋めちゃ駄目だ」 「何でよ!魔族は土にもかえれないの?」 そんなの切な過ぎる! 「コッヒーを野晒しにしてはおけないよー」 「責任持って回収させますから。埋めちゃったらもう二度と飛べないじゃないですか」 「「は?」」 「だから、骨飛族はきちんと組み立て直せば、元どおり飛べるようになりますから」 「し、死んでないの?」 「彼等の生態に関しては、実に不思議な部分が多くて」 魔族ってやっぱすごいや。 「終息に近付いてきてはいますが、まだ残党の抗戦もある。いいですか、決して俺の目から届かないところに行かないでください。流れ矢に当たって命を落とす者もいるんだから」 もうそれは、嘘みたいには聞こえない。