何でこの世界ってホントに美形が多いんだか。 落ち着かなくて仕方がない。 決めた。 絶対馬に一人で乗れるようになってやる。    白か黒か、私はどちら? ただいま、ヴォルフラムの私兵の一人と相乗り中。 やっぱり美形揃いの皆さん。 ヴォルフラムは婚約者を後に乗せて、多少荒く馬を走らせている。 私、そっちじゃなくて良かった。 「…あれ?」 「今頃はもう治まってるって、お前さっき言っただろ」 「妙だな、そんなはずが」 数十メートル先に見える村は燃えていた。 村の人々…女、子供、老人が皆、言葉を失って立ち尽くしている。 これ、かなりヤバイんじゃないの? 「相変わらず世間知らずだな、三男坊」 金髪でガタイがいい男の人が登場した。 「……アメフト・マッチョ!?」 え、そんな名前なの!? 「アーダルベルトだっけ」 人を早合点させないでほしい。 そういえばそんな名前を聞いた気が。 そうだ、有利を言葉がわかるようにしてくれた人。 …と、私と有利以外動いていないことに気付いた。 アーダルベルトがゆっくりとこちらに近づき、ヴォルフラムの横顔を眺めながら言う。 「これだからお前は甘いってんだよ。王様を護るのに十騎ばかりでいいのか?しかも純魔族なんかばかり集めたりするから、魔封じの法術に簡単にひっかかる」 皆、動いてないんじゃなくて、動けないんだ。 有利は知り合いっぽいけど、敵?味方? 「よう、また会ったな新魔王陛下。もう一人の陛下に会うのは初めてだな」 会ったこともないのに、もう正体がバレていた。 「…こいつらが動けないのはあんたのせい?」 「ああ、まあな。ちょっと修行して覚えた魔封じの法術だよ」 …会話に入れないなぁ。 「あんた、ほんとは魔族なんだろ」 「え?」 「昔はな」 「じゃ何でこいつやコンラッドと仲悪ぃの。何でわざわざ邪魔しに出てくんの」 「嫌いだからさ」 好き嫌いの問題か? 「オレは死ぬほど魔族が嫌いでね。こいつらのやり方に嫌気がさしてんのさ。だから薄汚ねぇ魔族の手から、お前さんたちを救ってやろうっていうんじゃねぇか」 「救う?」 「いきなり違う世界に連れて来られて、魔王になれだなんて強要されてんだろ?お前らみたいな若くて善良な人間を、そんな悪者に仕立て上げようってんだ。  あまりにひどすぎると思わねーか?」 ………。 「こいつらには犠牲が必要だったのさ。それには抵抗も反抗もできないような、何も知らない真っ白な若者がいい。  魔族に敵対する人間達に、全ての元凶として憎ませる、そのためだけの存在として、お前達を魔王にしようとしてるんだ」 そう、なんだろうか。 「お前達は善良な人間だ。だから魔封じの術も効果がない。そうだろ?」 私は、人間で。 でもおじいちゃんは魔族で。 でも私には魔族にきく術はきかなくて。 それじゃあ私は。