倒れてから部屋を訪ねて来たヴォルフラムの態度は違った。
友好的とはいえなかったけれど、なんていうか…面白いなぁ。
ツェリ様にこっぴどく叱られたらしい。
どこの世界でも、母は強し。
そんな風に呼ばれたのは初めてです
有利より早く目を覚まして二日が経った。
私が目覚めた歓喜と有利が目覚めぬ杞憂でギュンターは始終私の傍に居て、この世界のことを教えてくれながらも時々発狂。
コンラッドはグウェンダルと共に国境近くの村の紛争の鎮圧に行ってしまった。
自分も行く、とは言ったけれどやはり止められた。
仮に行ったところでどうしようもできないけれど。
「陛下!ユーリ陛下がお目覚めになりましたよ!」
ギュンターが私が目を覚ました時以上の顔で部屋に乱入してきた。
「ほんとっ!?」
「それがヴォルフラムがユーリ陛下を訪ねてまいりまして、このギュンター、もちろんお傍に居たかったのですが…って、陛下!?」
後でギュンターが何かしゃべってた気がするけど、気にしないっ!
「有利っ!目が覚めたんだって!?」
「!」
ありゃ、先客か。
「えーっと、もしかして…お邪魔だった?」
「何でそうなるんだよ!」
いや、ヴォルフラムの顔はそう言ってるんだけど。
「あ、それより聞いたか?国境近くの村で」
「ああ、紛争でしょ?」
「俺、行かないと」
「行くって、はぁ?国境へか!?そんなにコンラートの顔見に行きたいのか!?」
それは違うだろう。
「子供たちが心配なんだよっ」
「子供?」
「この城に着く前に泊めてもらったところでさ。子供たちと知り合ったんだ。そこで紛争なんて…」
「ああ、難民の心配か」
「うるせーなっ、お前にかんけーないだろっ」
「関係なくないぞ!その格好で行くつもりか?」
服が寝癖が、こんな時間に行くつもりかなどヴォルフラムは母親のようにまくしたてた。
そして扉の向こうにいた女の子に命じる。
「よし」
「よしって…」
「行きたいのだろう?乗せてやる」
えっ、冗談?
「なにしろ馬にさえ独力では乗れないという、能無し魔王陛下だからなお前達は!
歴代の魔王の中で初めてだよ、お前達ほどどうしようもないへなちょこ陛下は!」
「「へ、へなちょこ言うなーっ」」