Let's marry!



「なあ、しっぽりむふふってどういう意味だ、理樹」

「えっ!?」



鈴投手の大暴投が出た!



「私は“しっぽりむふふ”より“もっふりうふふ”の方がいいなあ」

「な…なんだそれ!くちゃくちゃ良さそうだぞ!」

「ね、もふもふ」



にゃんこに手を伸ばしてなでてみる。



「…あたしはもっふりうふふに賛成だ!」

「いい感じでしょ」

「いい感じだ!」



鈴ちゃんは相当興奮してもふもふしている。



さん、ありがとう…」

「いえいえ」

「うーん、ならあたしの姉ちゃんになってもいいぞ」

「本当?」

「いや、母ちゃんでもいい」

「お母さん!?」

「えー嬉しいなあ」



鈴ちゃんはくちゃくちゃ可愛いし、子供でもいいかもしれない。



「いやいや、さ…」

「それは駄目だ!」

「「「恭介」」」



どこから現れた。



「なんでダメなんだ!が母ちゃんだったらいいだろ!」

「いや駄目だ!なぜならは俺の妻になるからだ!」

「「ええーっ!?」」



付き合ってすらいないのにいきなりプロポーズされてしまった!



「なにぃ!?それはダメだ!はあたしの嫁だ!!」



………。



「………ん?」
「………え?」
「………は?」



思わず3人でぽかんとしてしまう。
母ちゃんじゃなかったのか。



「鈴!?どういうこと!?」

「ん?好きなやつのことを“俺の嫁”って言うんだろ?」



…どっからそんな知識を仕入れてくるの…。



「えーっと…」

「なんというか…」

「鈴、諦めろ」

「恭介、お前が諦めろ」

「…モテモテって感じ?」



っていうよりは、兄妹喧嘩に巻き込まれてる感じな気もするが。



「もー二人ともやめなよ」

「引いたら負けだぞ!?」

「あたしは負けない!」



理樹くんの仲裁もむなしく、両者睨み合ったまま。



「んー…鈴ちゃんは理樹くんのお嫁さんになったら?」

「ええっ!?」

「いやーせっかく4人いるんだしさ。男2人女2人なんだしさ、私を取りあわなくてもいいと思うのね」

「だからって…!」

「うーん、理樹が婿か…うん、悪くないな」

「鈴!?」



切り替えが恐ろしく早かった。



「あーじゃあ理樹くん弟かー」

さん!?納得していいの!?きょ、恭介のお嫁さんって…」

「………ん?」



もう綺麗さっぱり忘れてました。



「わっちょっと待って!やっぱりそれはちょっと」

「よし、成立だな」

「私承諾してないし!」

「鈴の姉になるっていうのはそういうことだろ?」



そうなんだけどそうじゃないっていうか!



「うん、やっぱり恭介じゃ無理だな。あたしがピッタリだ」

「いや、鈴はダメだよ…」

「なんだ、理樹。あたしを嫁に欲しいのか?」

「えっ!?ええっと…」

「!」



恭介?
鈴ちゃんと理樹くんを微笑ましく見ていたのに、私の手を引いて歩き出してしまった。



「ちょ、ちょっと…」



恭介は何も言わないけど、ふっと笑っている。



「いいんじゃないかと思ったんだ」

「え?」

「いつまでも、が傍にいるのも」



その一言だけで、涙がこぼれる。

夢。

いつ…までも。
いられたら。



「私も、嬉しいな。一緒にいたい…私を呼んだのは、呼んでくれたのは恭介だもの」



超えられない時間。

超えられない世界。

はじめから存在しない私。





「なに?」



たゆたう波の中。

それでも。

それでもこの輪に呼んでくれたのは。

恭介だったね。



「歩き続けたら行き止まりがあると思うか?」

「思わない」



思いたくない。

それは繰り返しという意味ではなく。

その先があるんだと。



「信じるくらいは、許されていいと思う」

「…そうだな」



ひどく、ゆっくりに感じた。
恭介の髪の色が、陽の光に照らされて綺麗だななんて思って。
それから、唇が触れていることに気がついた。



「…きょう、すけ?」

「いきなり結婚は困るらしいからな」

「な…!?」



嬉しいけど困る。

ループしていても、記憶は全部あるんだから。



「きょうす…!」



抗議は全部、却下らしい。