君との距離



「紫原は大きすぎて、私を殺す気なのかなって思うよ」
「なにそれ」
「目線合わせるだけでも大変なんだもん。首が痛くなる」
「わかるー。キスしにくいし」

あれ?そこは同意するとこじゃなくない?

「もう少し小さくなってよ」
「そんなん無理だしー。俺はちんはそのまんまでいいと思うけど」

ちょっと不覚にもときめいた。

「ちっちゃいまんまで」
「誰が小さいんだ!」

女子の平均と比べてみろい!
170cmを舐めるな!
…しかし、そこまであってもこの身長差だもんなあ。

「やっぱちょっと小さくなってみない?」
「やだ」
「じゃあ私が大きくなるしか…」

今から牛乳って効果あるかな。

ちん」

紫原がソファに座り、隣をポンポンと叩く。
立っている私を見上げて。

「これだあ!」
「は?」
「いつも私ばっか見上げる側なんだもん。たまにはこういう形でいこう」
「え〜」

うんうんと満足していると、突然腕を引っ張られた。

「うわっ!?」
「なんかやだ」
「はあ?」

紫原に倒れ込んで顔を上げると、立った時より距離は近いものの…やっぱりデカイ。

ちんの上目遣いがいいの」
「…強制上目遣いね」

首を酷使するしんどい技だ。
うんざりしていると、紫原の腕が回り膝の上に座らせられた。

「やっぱ気に食わない」
ちんしつこい」

諦めたら、と紫原が覆い被さってくる。
これはきっと抱き締めるとは言わない。
そうやってすっぽり収まりながら、私は女の子なんだなあって考えたりする。
その群れの中にいれば、頭がちょっと飛び出るのが私だ。
それは少し、ほんの少しやっぱりコンプレックスで。

「…好きだからいっか」
「………」
「ちょっと!いきなり無言でキスしようとしないでよ!」
「キスしていいって聞くとダメって言うじゃん」

それは人前だったり悪いタイミングなことが圧倒的ですよ、紫原くん。
別に…許可を取れって言うんじゃないけど、心の準備というものが…。

「だからさあ」
ちんうるさい」

私ごとなくしてしまうようなキスだった。