崩れ落ちる砂糖菓子



今日もご苦労様、私。
エルルゥと料理を作って、新人さん達に弓を教えて。
ハクオロさんの仕事を手伝って、ムントさんの愚痴を聞いて。
すっかり夜も更けてしまった。



「さーて、そろそろ寝ようか…ぶっ!」

「あら、失礼」



角を曲がろうとしたところで、誰かにぶつかってしまった。



「え、あ、すいません」



すごい美人。
誰だろう…?



「どうしましたの、

「え………」



私の名前知ってる?



「私ですわ」

「あ…カルラ!?」



三つ編みに髪を編んで見せてくれてやっとわかった。
今のカルラはすごく綺麗。
髪を下ろして、女らしい服を着て。



「どうしたの、誰だか全然わからなかった」

「ちょっとした用事ですわ」

「へぇ、すごく綺麗だよ」

「ありがとう。それでは失礼しますわ」

「おやすみなさい」



ぼーっと見とれながら見送ってしまった。



「…そういえば、なんだか甘ったるい匂いがしてたかも?」



香水かな。





「ベナウィ!なんかすごい量だったけど、あれ終わらせたの?」

「きりのいいところまでしか終わりませんでした」

「あはは、毎日ご苦労様…ベナウィ?」

…」



あれ?
何だかいつもと違う気がする。
じりじりと壁際に追い詰められる。



「あの…ベナウィ、さん?」

「………」



おかしい。



「ちょ、ちょっと待った…!」

「…待てません」

「いたっ…」



手首を一括りにされて、抵抗ができない。
なんでいきなり?
怖い…!



「やっ…ベナウィ!やだっ!」

「っ!」



ベナウィの動きが止まる。



「…、今すぐに湯を浴びて来てください」



顔を伏せて、しぼり出すような声。



「え?」

「早く!すみません…」

「わ、わかった…」



緩くなった拘束から逃れて、湯を浴びに行った。
どうしたんだろう。
何が起きたんだろう。
手首が少し、赤くなっていた。



、先程はすみませんでした」

「あ、ベナウィ…」

「すぐに気付けば良かったんですが…」

「何に?」



話が見えない。



から香ったあの香り…あれは女王蜂の蜜の香りで、嗅いだ者の性的欲求を高めるという」

「えぇっ!?」

「なぜ貴方から香ったのかはわかりませんが…」

「…もしかして」



甘い匂い。



「えっ、てことは…」

、どうかしましたか。顔が赤いですよ?」

「なっ、なんでもない!」

「私にとっては今の貴方の姿も魅力的ですね」

「はい?」

「私には甘い香りなど必要ないということです」