コンビニ帰り、君と並んで
「…寒」
手袋くらい持ってくるんだったな。
もう春先だってのに、意外と寒いもんだ。
「あれ、?」
「あ、久保ちゃん。おかえり」
「ん、ただいま。ひとり?」
「うん」
「時任荷物持ちに連れて来りゃ良かったのに」
「気持ち良さそうに寝てたから置いて来た」
起こすと怒りそうだ。
「賢明な判断かもね」
「でしょ?」
「貸して、それ」
久保ちゃんが手を差し出す。
「え?」
「買い物袋。重くない?」
「重くないよ、牛乳一本くらいさ」
「手、真っ赤になってる」
「ん?」
言われて見てみれば、確かに赤い。
「それを俺が持てばポケットに手を突っ込むくらいできるんじゃない?」
「あー、うんそうかも。でも平気…っ!?」
ぱっと袋を取り上げられて、空いた私の手は。
「久保ちゃん?」
「んー?」
何かありましたか、とでも言うように煙草の煙を吐き出した。
「あったかいね」
それを見たら、なんだかまぁいいかという気持ちになった。
「でしょ」
「うん」
君のコートのポケットの中。
幸せ恋人つなぎ。