どこでも仲良し
ゴッ!
「ぃっ…痛ぅ…」
一瞬頭が真っ白になった。
痛い。
これは痛い。
マジで痛い。
勝手に目から涙が溢れてくる。
「…ずいぶんいい音したな。大丈夫か、お前?」
「………っ」
言葉すら発せずにぶんぶんと首を振る。
「おー、額腫れてんぞ」
「っ!保健の先生だったらもっと心配してくださいよっ!!」
「っ!?」
え。
「ー!?お前どうしたんだ、そのおでこはあああ!!!先生!先生がついていながら」
「とりあえず落ち着け鷹士。そして勝手に人ン家に入ってくんじゃねぇ」
バンッと勢いよくドアを開けて、お兄ちゃんが乱入した。
「あああ、可愛いおでこが真っ赤じゃないか!大丈夫か?痛かっただろう?」
「あ、うん、痛かったけど、もう大丈夫」
「大丈夫なわけあるかっ!嗚呼可哀想に!」
お兄ちゃんにびっくりし過ぎて痛みはどこかにいきました。
「まあ落ち着けって、鷹士」
「落ち着けるわけないだろう!?妹がキズモノになってしまったんだぞ!?」
いや、それ意味が違うから。
「お、お兄ちゃん。ホントに大丈夫だから。それよりどうしたの、いきなり?」
まるで監視カメラでも仕掛けて置いたような。
…むしろドア一枚向こう側にいらっしゃったのではないかというタイミング。
「そりゃあ大事な妹の危機を察知したからに決まってるじゃないか!」
「お兄ちゃん、ホント落ち着いて…」
「兄ちゃん毎日寂しいんだぞ。お前と先生は学校でも一緒なのに、最近は帰ってきてからもすぐ先生の家に行っちゃうじゃないか」
「あー…まぁ」
「いままではずーーっうっと兄ちゃんと一緒だったのに、最近は先生とばっかり!」
「そんなことないよ…」
こっそり視線をさまよわせて先生を探してみれば。
何事も無かったかのように晩御飯の準備を始めていて。
現実逃避か。
…それとももう諦めたのか。
「聞いてるか!?!!」
「あ、うん、聞いてるよ」
「昔はいつも兄ちゃんにくっついてたのに、今は先生なんて!いつでもどこでも先生と仲良くしてるじゃないか!」
「そういうわけじゃないよっ!?」
何を言い出すのか!
「鷹士もこれ食ってけよ」
トン、とテーブルに先生が料理を出す。
これがお兄ちゃんの鎮静剤となるだろうか。
「よし、今日は飲もう!先生!」
お兄ちゃんは泣いている。
「お兄ちゃん、私飲めないけど…」
二人だけで盛り上がられてもなぁ。
「当たり前だろう!可哀想だけどお前はまだ飲んじゃだめだぞ!」
そういう意味じゃなくて。
「…もう諦めろ、」
「はい…」
先生はお酒を出す気じゃなかったみたいだけど、お兄ちゃんは止まらなくて。
ビールを飲みながら切々と涙しながら私との思い出を語ってくれた。