鼓動限界数



?」

「な、なに」

「抱き締められるの、嫌?」

「い…いやとか、そういうんじゃなくて…」



恥ずかしいんだ。
慣れてないんだ。
心臓がヤバイんだ。



「耳が真っ赤だ」

「ひゃっ!?」



どうやら、耳を舐められたらしい。



「すいません、赤く熟れてるように見えたので」

「変なこと言わないでよ…」

「そう?」

「………っ」



また。
こ、恋人同士ってこんなことばっかするの!?
刺激が強過ぎます、ウェラー卿!
抱き締められそうになって、反射的にコンラッドの体を押し返してしまっていた腕は、いつの間にか力が抜けていた。
ただ服を握っているだけ。
さっきから中腰で辛くないのかな。
私の顔を覗き込むような体勢のせいだ。



「俺の顔を見てください」

「………」



引力に逆らうかのように、それはとても大変なことだった。
しかし、コンラッドをなんとか見ると、その瞳の美しさに見惚れてしまう。



「…銀色、綺麗」

「あなたの目の方が綺麗だと思いますけどね」



黒ってだけじゃないか。
仮に日本にでも来れば誰でも超美男美女だ。



「日本人はそんなのよりどりみどりだよ」

「だとしたら、一番美しいのはあなたでしょうね」



どうしてそういう言葉を易々とはけるのか。



、もう限界だ」



コンラッドが苦笑する。



「え…っ」



言うが早いか、コンラッドの腕は私の後頭部と腰を捕らえた。
重なる唇に逃げ場はない。



「………っ」



すきな人にこうして口付けてもらえるのは嬉しい。
けれど、どこか切なく感じるのはなぜだろう。
愛し過ぎて、切ないなんて。



「ん、ふ……」



酸素が足りなくなって、考えるのが億劫になる。
と共に、息苦しくなって、コンラッドの胸を叩く。



「……はぁ」



やっぱりまだ慣れない。
慣れるほどしてるわけじゃ…ないと思うけど、多分。



「もう一度してもいいですか?」

「えっええっ!?」



わざわざ聞かないでほしい。
嫌だと言ってもいいんだろうか。



「えっと…その…」



別にそれはコンラッドのことが嫌いとかそういうんじゃなくて。
むしろ好きなわけで。
恥ずかしくてドキドキして死にそうだからもうやめてほしいんだけど。
でも嫌って言って傷付けたくないし。



「クス、冗談です」

「…は?」

「可愛くて、つい」

「つ…“つい”じゃないでしょ!?」



人がどれだけいろいろ考えたと思って…。



「…しばらく禁止ね」

「どうして?」

「私の心臓がもたない。早死にしちゃうもの」

「早死にですか?」

「人間の心臓って一生のうちにドキドキする回数が決まってるんだって。だから」

「そうなんですか。それは良かった」

「え、早死にしてもいいと!?」



それ酷くない!?



「あなたは魔族ですから、大丈夫ですね」

「え?あ…うん…?」



いいのか、その理屈。



「これからもたくさんドキドキしてください。俺はそんなあなたが可愛くて仕方がないから」



ああまた、寿命が縮んじゃったよ。