黄瀬涼太とは あー私の嫌いなタイプだって思った。 第一印象。 リフティングで200回越え。 バカだって思った。 顔はカッコイイと思います。 スポーツも万能だと思います。 勉強は正直イマイチだと思います。 しゃべったこともないので性格とかわかりません。 愛想良さそうだけど。 私が勝てるのはがんばって勉強くらい? 「危ないっ!」 え? 「ぶっ!」 痛い!痛い!痛い!痛い!! 「―――っ」 あまりの痛みにしゃがみ込んだ。 勝手に涙が出てくる。 だって、顔だよ、顔。 「大丈夫スか!?」 あれ…この声…。 「うっわ俺サイテー!女の子の顔にボール当てちゃうなんて…!」 なんとか落ち着いてちらりと転がるモノを見る。 …これ、バスケットボールじゃん。 そりゃ痛いわ。 「…大丈夫スか?」 「!」 黄瀬涼太の顔が、間近に。 「た、多分、平気」 「ちょっ!泣いてるじゃないスか!女の子泣かすとかサイテーっスわ、俺!!」 うるさい。 私の惨状をデカイ声で周りに伝えないで。 「痛かったスよね!?ホントごめん!ごめんなさい!!」 「………」 必死で謝ってくれてるとこ悪いんだけど。 「………さい」 「え?」 「う る さ い」 「………スイマセンデシタ」 あーやっちゃった。 これだからキツイだなんだ言われるんだ。 「…はあ、黄瀬くんってバスケ部だったっけ?」 「昨日入部したばっかなんスよ!」 なんだか彼はキラキラしている。 「違うね」 「へ?」 「雰囲気が。なんか一気に変わった感じ」 「………」 やば、変なこと言ってるよね。 「そうなんスよ!!」 え? 「いやー今まで何やってもつまんねーって思ってたんスけどバスケは違うみたいなんスよ!」 俄然キラキラ度がアップして私に伝えてくる。 「は、はあ…」 「それで」 「何やってんだぁ、黄瀬ェ?」 「げっ!先輩!」 「サボってんじゃねーぞ!」 「すんませんっ!」 うらやましいと、少しだけ思うかもしれない。 「黄瀬くん」 「はい?」 「がんばって」 「うん!」 先輩に怒られてる姿、やっぱりダメなヤツだと思います。 それで泣いちゃってるとことか、情けないと思います。 性格も普通にバカだと思います。 でもボールを持った瞬間。 キラキラした笑顔。 あー嫌いじゃない、と思った。