契約の対価




「ぃよう!卿!」

「…いよう」

「なんだァ?テンションが低いぜェ?」

「あんたが高過ぎるんでしょ」



こういう時はあんまりいい予感はしない。
加担するのは好きだけど。



「で、何のご用かしら。黄金のベアトリーチェ様?」

「そう邪険にせずとも良かろう?妾とて、大事な用があってそなたを呼んだのよ」



大事な用と言う割に、陽気で深刻さなんか微塵もない。



「ロノウェのことなんだがな」

「ロノウェがどうかしたの?」



主人をからかう不敬な一面があるものの、家具として執事としては完璧だと思うが。



「またいじめられた、ベアト?」

「違うわっ」

「じゃあ何。まさか一部で噂されてるみたいに戦人くんとアレな関係に…」

「そうよ!」



え。



「ちょ、ま、確かにそれは大事な話かもしれな」

「あやつの契約の対価が面倒なんだよォ」

「は?」



対価として戦人くんを差し出すというのか。
魔女も悪魔も人でなしね。
…確かにニンゲンとは異なるか。



「あやつの肉欲を満たさねばならぬ」

「に、肉欲って…!は、はは、戦人くんの肉くらいいくらでも食べさせてあげればいいじゃない!」



ああ、私もやはり魔女だ。



「そなた、まさか本当に肉を食えば満足すると?」



わかってる。

わかってる。

わかってる。



「あーあ、戦人くんてば可哀想に…」

「妾の話を聞かぬか!」

「何よぉ」



次に会った時にどんな態度で接するかとか考えなきゃいけないじゃないか。



「そなただ」

「何が」

「ロノウェがなァ、そなたを望んでおるのよ」

「っ!?げほげほっ!」



あまりの衝撃に紅茶にむせる。



「大丈夫ですか?」

「ぎゃーっ!どこから現れた!」

様が苦しそうにしてらっしゃるのを見過ごせないでしょう」

「見過ごしてくれて構わないわ!シーユーアゲインハバ」

「ナイスデイ!」

「ちょっとベアト!?」



私の言葉を奪い消えてしまった。
ということは今この空間には。
私とロノウェの2人だけ。



「お嬢様から聞かれたようですね」

「な、なーんのことかしらぁ?」



聞いてない。
私は何も聞いてないんだ。



「…フツー主とかでいいんじゃないの?いや、それくらい主が何とかするべきよ」



してくれ。
かといって、ベアトとロノウェがソレな関係も嫌だけど。



「お嬢様はそういう対象ではありませんので」

「じゃあ私も除外してくれると助かるんだけど」

「ぷっくっく。申し訳ありません」



えっ、これ断られた?



「ちょ、こっち、来ないでよ」

「そうおっしゃられましても」



嫌なら本気で拒めばいいんだ。

でも。



「ぷっくっく、力を抜いてください」

「もうっだからぁ!うきゃーっ!らめええええっ!!」





この悪魔との恋は勘違い。

ただの、一人遊びなのだ。