恋心隠した




とくり、と心臓が反応する。



様、車の準備が出来ました」

「うん」

「またね、

「無理しないでよ、閑雅」



幼馴染に別れを告げて、部屋を出る。



「今日は元気そうだったね、閑雅」

「ええ、高成様には会いに行かれたんですか?」

「うん」



何気ない会話。
それでも嬉しい。
なんでもいいから話していたい。
声を聞きたい。



「あなたはどちらを選ぶんですか?」

「え?」



世界がモノクロになった。
先のことなんて。



「さあ…どっちかな」



本当はあなたのことが、なんて。
二人のうちのどちらかを選ぶことよりも難しい。



「どうぞ」

「ありがとう」



車に乗り込む。
あなたは知ってて言ってる?



様」

「はい?」

「私は、東宮家の執事です」

「…当たり前、でしょう」



恋心隠した。

それは、お互いにだなんて。

二人とも知りえない。