大好きって言ったら君は どうするんだろう。 握り締めた携帯電話は。 鳴らないまま。 悩み過ぎて、痛くて、苦しくて。 流れた涙も拭わずに。 ひとり暗い部屋で。 声を待ってた。 「っ!」 動物のように反応した自分に驚いた。 かかっていたはずの鍵が開いた。 合鍵を持ってるなんて、あの人だけだ。 ビニール袋の音が耳につく。 一歩ずつ、こっちに近付いて来る。 何日ぶりだろう。 いつもの笑顔を用意しておけばいい? ドアが、開く。 「っと、いたの?」 「…ひさし、ぶり」 連絡くらい寄越しなさいよと心の中で毒づいてみる。 それくらいの余裕はあるんだな、私。 「電気くらいつけろよ。それとも寝てた?」 「なんか、めんどくさくてね」 そんな場合じゃないってば。 パチリと電気のスイッチが押される。 明るさに目が痛い。 「…なんで、泣いてんの」 「あは、バレちゃった」 誰のせいだと思う? 怖くて、不安で、たまらなかった。 さあどうする私。 ごまかすんなら最後のチャンス。 なんて。 考えてられるなら、こんなになってない。 「好きって言ったら、悟浄どうする?」 「はい?」 「大好きなのって言ったら、どうする?」 わかってる。 困るよね。 だってたくさんのおねえさんたちと遊んでいたいオトシゴロでしょ? 「どうしたんだよ、いきなり」 「いきなり、じゃない」 もうずっと前から。 好きなんだって自覚した瞬間から。 言えない言葉だった。 言ったら、全部壊れてしまう気がして。 「いきなりじゃない。ずっと思ってた。ずっと、ずっと、ずっ」 「ストップ!」 「えっ!?」 「あのさ、信じる?これを俺が今日用意してきたって言ったら」 「………」 小さな箱から、出てきたのは。 「うそ、だぁ」 「冗談でも言うと思った…。俺はもう好き以上なの。愛してんの」 ずるい。 順番が違う。 「もらってもらえますか?」 ぎゅうっと心をつかまれたみたいに。 うれしくて、せつない。 「…はい」 薬指に光る指輪を。 手を繋いで、重ねてみる。 「そろそろ泣き止んだ?」 「うん。いい加減落ち着きました」 「んじゃ悟浄さんチューして欲しいなぁ」 「やだ」 「えっ」 「悟浄さんからしてください」 「…はい」 大好き。 今まで言えなかった分、これからはたくさん言おう。