寒いけど暖かい。 「はっくしゅっ」 寒い…。 何度目のくしゃみだろう。 「防寒対策なんかして来てないよ…。先生の馬鹿ー」 だってすぐ入れると思ってたし。 先生の家のドアに背中を預けて待ち惚け。 帰ればいいのに帰れないのは、もうすぐ帰って来てくれるんじゃないかって思ってしまうから。 「来てもいいって言ったの先生じゃん…」 泣きたくなってくる。 携帯も繋がらない。 何で。 どうして。 「忘れてるの…?」 「っ!」 「先生…」 走って、来てくれたんだ。 息を乱して。 「お前…ずっと、待ってたのか?」 「当たり前じゃないですか!先生が来ていいって言ってくれたから…」 「あー…悪かったな。急に怪我人が出てな。病院に連れてった」 「そうだったんですか!?その子は…?」 「何ともねぇよ。それより中入るか。お前が病人になっちまうな」 頭をくしゃりとなでられる。 「大丈夫ですよ」 「鼻真っ赤にしてるヤツが言うことか」 先生がいたら平気。 ぎゅっと抱きついた。 「…珍しいな」 「たまには。待ってたご褒美ってことで」 走ってせいか、先生の体はあったかくて。 「ねぇ、先生?」 「何だ」 「寒いけど暖かい」 「…そうだな」 次の日、結局熱を出して先生に怒られるのだけれど。