大きなジャケット 「何してんだ、お前は」 「えぅっ!?」 し、しまった。 不覚! いつの間にか起きた先生が仁王立ちしていた。 「や、あのぉ、これは…」 「オレ様のジャケットなんか羽織ってみちゃって、可愛いことしてるじゃねぇか」 ひぃぃ、見つかるなんて思ってなかった! 恥ずかし過ぎて死にそう! 「だだだだって、先生二日酔いで寝てたから!今日はもう起きないって言ってたじゃん!」 「で?」 「“で?”って…だ、だから…」 腹いせというか、出来心というか。 「ちょっと、外に出る気分でも味わっちゃおうかな、って…」 「そうまでして出掛けたかったのか?」 「なんっで約束破った当人がそんなに偉そうにしてるんですか!」 別にこんなドタキャン初めてじゃない。 だけど、慣れるわけじゃなくて。 いつもショックは受けてるのに。 「まぁとりあえずそれ脱げよ」 「…嫌です」 ほんの少し抵抗してみる。 「脱がないとお前が困るんだぞ」 「何でですか」 「大きめのYシャツよろしくジャケット羽織った女がベッドを後ろにして立ってるっつーシチュエーショ」 「わーっ!なんかよくわかんないけどわかりました!今すぐ脱ぎます!!」 急いで脱いで急いで先生に返却した。 それを今度は先生が着て。 「よし、行くぞ」 「え、どこに?」 「映画館。お前観たいのがあるって言ってただろ」 「先生、覚えてて…!」 「早く支度しろよ」 「はいっ!」