指定席はストーブの前 「どけ!」 「無理!」 合言葉のように切り返す。 「いい加減にしろ…」 「だって寒いんだから仕方ないでしょ」 「お前がそこにいるせいで部屋があったまらねぇんだよ」 「あったまるまで待ってられないわよ」 理屈はわからんでもない。 だけど。 だけど。 「外に比べりゃマシだろうが」 「寒空の下と比べないでよ。とにかく動きませんからね」 ストーブの前に体育座り。 温風を完全に支配した。 が。 「ええっ!?」 私の体は宙に浮いた。 「ちょっと三蔵!?何考えてんのよ!」 「うるせぇ、黙れ」 三蔵が歩くのに合わせて後退していく体。 ジタバタ動いても効果ナシ。 そしてソファの上に落ち着いた。 「…で?何これ」 三蔵に後ろから抱きかかえられている状態で。 「これでも寒いってのか?」 手も地味に恋人つなぎだったりして。 「いや…あったかいです」 最終手段に出る三蔵って、いつもドキドキさせてくれる。