ねぇ、手ぇつなご?



「ねぇ、手ぇつなご?」

「はい?」



千里が手を止めてこちらを見た。



「そんな驚くこと?」

「君がそういうこと言ってくれるのは嬉しいよ。ただ」

「珍しいってことですか、そうですねー」



言っちゃ悪いか。
私だって…一応オンナノコだもん。



「ほら、手貸して」
「ん」



…綺麗な手。
あったかい。



「冷たいね」

「冬だし」

「女の子は体を冷やしちゃいけませんよ」



じゃあ。



「千里先生、あっためてください」

「わかりました」

「そこ、にっこり笑ってネクタイに手をかけない」

「あれ、そういう意味で言ったんじゃないんですか?」

「………」



いやまぁ、そうじゃないと言ったら嘘になるけど。
これもあなたの声を少しでも多く長く聞く為の会話術だと知ってますか?



?」

「っ!顔近いっ!!」

「油断大敵、ですよ」

「何がよ…」



そんな会話の中で、ふと気付いた。
千里、私の手を離してないんだ。

気持ちが伝わればいいな、なんて思いながら。
少しだけ、力を込めた。