手のひら同居人シリーズ・青峰くん編2(フードin青峰くん)



「ああ!醤油がない!」

あと一歩で料理は完成するところまできていたのに、大事な調味料は一昨日使いきったことを思い出した。

「味付け変えれば何とかなるかな…いやしかし今日は醤油味でいきたい気分…」

近くのコンビニへ行こう。
ソファに脱ぎ捨てていたパーカーを羽織ろうと掴むとあり得ない重さを感じた。

「!?」

よく見ると、フード部分におかしな膨らみが。

「………」

一体何が入っているのだろう。
奇妙な事態に嫌な汗をかく。
だって出たことないけど、ネズミだったりこぉんな大きい虫だったら私気を失うっていうか、ショック過ぎてそのまま死にたい。
ウチには私と…。

「あっ?」

いた。
こんなとこにもすっぽり入れてしまう、同居人が!
フードをめくるとやっぱり青峰くんがスヤスヤ眠っていた。
姿が見えないと思ったらこんなところにいたのか。
か、可愛い…。
起こすのはもったいな…忍びない。
でもこの格好で外に出るのは寒いし、他の上着は全てお洗濯…。

「青峰くん、起きて」
「んー…」

ほっぺをツンツンしてもちょっと顔をしかめただけ。

「………」

いつも迷惑を掛けられてるんだ。
ちょっとしたイタズラを思い付いた。





「………?」

ふと目が覚めると真っ暗…いや、時折上から光がさしていた。
一定感覚の揺れは、心地良さとはかけ離れている。
その揺れがピタリと止まったのでこの空間から顔を出すと…。

「外!?外か!?」
「うわ、首の後ろから声がする。青峰くんおはよう」

目の前の頭がのんきに挨拶する。

「おい、何してんだよ
「何って、青峰くんをフードに入れてお出掛け」

揺れが止まったのは信号待ちだったからかよ…。
青に変わった瞬間、が歩き出して突然の揺れに俺はフード内に沈んだ。

「ぐっ、首に結構な衝撃だよ…」

いつもコソコソしろとうるさい同居人は人通りがないせいか、外なのによくしゃべる。

「とりあえず止まれよ。せめてバッグに移せ」
「たまにはいいでしょ、こういうのも」
「酔って吐いたらどーすんだ」
「えっ!青峰くん気持ち悪いの!?」

全然平気だ。

「ほら、もうお店入るからおとなしくしててね」
「だからどうにかしろって」
「だって可愛いんだもん」

楽しそうな声にイラつきを感じた俺は、素早くフードを脱出した。

「可愛いのか?」
「わーっ!?」

頭の上に落とした声にが絶叫した。
今の俺は普通サイズ。
小さいのはの方だ。

「…可愛いってのが気に入らなかったのか」
「男が喜ぶ言葉かよ」

それよりあの状況を楽しんでたにイラッとしたんだけど。

「んじゃ帰る」
「えっ!ここまで来たし買い物付き合ってよ!」
「めんどくせぇだろ」
「私のか弱い腕で醤油を持って帰れって言うの!」

お前はか弱くねぇよ。

「帰って寝直すわ」
「じゃあご飯抜きね」
「!?」

がこういうことを言うと本気だからめんどくせぇ。

「青峰くんがいないと困るから付き合ってよ」

その顔は恐ろしさをはらんでるかと思いきや、意外と…。

「…さっさと買って帰るか」
「うん!そうしよう!」





「…チャーハンってそこまで醤油必要だったか?」
「私が醤油味が良かったの。おいしくない?」
「…まぁいいんじゃねぇの」