本当は、好きだったんだね 「人は皆、愛されるために生まれてきたって、誰かが言ってた」 「………」 その時初めて気付いた。 彼女にはもう白金の椅子はない。 どれだけ慕われようと位を持つことは出来ない。 姫ではない、なることが出来ないということに。 けれど。 彼女はそれで構わないというのか。 「だからね、みんな幸せになったらいいなって、思う」 「それ、本心?」 「え?」 そう、攻撃せざるを得ない。 すべてを約束されて生まれてきたような少女が。 今奪われてしまったも同然ではないか。 まだ、少女だというのに。 「うん、本心」 「それで君は幸せになれるんですか?」 「さあ…でもね、さっき言ったことが本当であれば、私も誰かに愛してもらえるんじゃないかな」 金や地位や権力名声にまみれたこの世界の中で、綺麗に生きていけるはずが無い。 と思ったけれど。 それをもう彼女は知ってしまったのだ。 陽の光を浴びながら、窓辺で微笑む彼女は違う世界にいるようだ。 「でもきっとね」 「はい?」 「その相手は…千里じゃないね」 また気付く。 彼女は。 僕のことを。 少女は笑っていたけれど、今にも消えてしまいそうだった。