君と一つになる
イスに座る後ろ姿、背中が大きいなって思って。
それ以外も全部大きいよなあって思った。
「ねーねー敦くん」
「なにー?」
「手、貸して」
「やだー」
「えっ!」
自分で言うのもどうかと思うけど、可愛い彼女が手を貸せといっているのに断るってどういうこと!
「あのね、私は何かを手伝ってって言ってるんじゃないの。ただ手を出してくれたらいいんだよ。その両手に持ってるまいう棒片手分だけ置いて」
「なんかめんどくさそうだからやだ」
「…お菓子あげるって言ったら出すくせに」
「はい」
ボソッと呟いた言葉が届いてしまったらしく、敦くんの手はさも当たり前のように伸びてきた。
お菓子に負けた。
彼女がお菓子に負けました。
「お菓子は後でね。今持ってないから。買ってあげる」
「え〜」
「あっちょっと手ェ引っ込めないでよ!」
「なにー」
寸でのところで手を掴んだ。
その時点でやっぱりおおき…。
「あ、あ、敦くん!待って!」
力が強すぎて困る。
掴んだだけでは足りなかった。
そのまま敦くんと机の間に挟まれる。
机が腰に当たってちょっと痛い。
「敦くん、この体勢苦しい」
「ちんが悪いんじゃない」
私がこんなに近くにいて、さらに苦痛を訴えているのにこの扱い。
私…彼女…?
………あ。
「敦くん」
サクサクとまいう棒を平らげていく彼に話しかける。
「んー?」
「もしかして怒ってるの?お菓子もらえなくて怒ってるの?」
「別にー」
嘘つき。
私が動いてこの状態から抜け出そうにも、片手は敦くんに捕まれたまま。
「…敦くんは、私とお菓子どっちが大事なの」
敦くんが私を見る。
「一緒に食べよー」
「えっ?えっ?」
ひょいと膝の上に乗せられる。
「ちょっと敦くんここ学校だむぐっ!」
顔をそらそうにも固定され、まいう棒も敦くんが突っ込んでいる。
力で勝てないのは嫌という程知っているので、口の中の水分をまいう棒に与えながら私は考えた。
一本を一気食いさせられてやっと解放となる。
机にあった飲み物をいただいて一息ついてから、まとめた考えを口に出した。
「ごちそうさまでした。つまりお菓子と私は比べられないと」
「ううん」
「えっ」
どっちかに決まっているらしい!
「お菓子も好きだし、ちんも好きだしー。ちんがお菓子食べてれば好きなものが一緒でいいじゃん」
「あ、そう…」
喜んでいいのかなあ。
開き直るのが一番の解決策だと思う。
「まあいいや」
敦くんの手を新たなお菓子を掴む前に捕まえる。
「お…大きい…」
わかっていたことなんだけど、いざ手のひらを合わせてみると違いに本気でびっくりする。
「そーだね」
驚愕する私とどうでも良さそうな敦くんの声。
「え、ちょ、痛い!敦くん痛いよ!」
何故か私の手がひねりつぶそうとされている!
手を合わせたまま、敦くんが指を曲げ始めたのだ。
良く言えば包み込もうとしている、みたいな。
実際は私の指は伸びたまま押し潰されんばかりなんですが。
「ちっちゃいね、ちん」
「悪かったねー小さいよー」
「誰も悪いって言ってないじゃん」
鼻で笑われてしまった。
「このままでいいよ」
すっぽり敦くんに包まれる。
後ろから見たら私がいることなんてわからないかもしれない。
敦くんと同化…いいかも。
「うん、いいね」
体を縮めてみると、敦くんがもっと大きく感じる。
誰か後ろから写真でも撮ってちょうだい。
今私たちは、一つになってる。