聞いて聞いて



「Trick or Treat」
「へっ?」
「トリック・オア・トリートって言ったんだよ」

ああ、さっきのはそういう英語だったのか。

「ごめんね、私英語の成績ギリギリ2だったの、リスニングは0点なの…」
さん、ハロウィンだよ」

クスクスと氷室くんが笑う。

「…あー!そっか!」

言葉を理解することだけ考えてた。

「お菓子ならあるよ」

ハロウィン仕様でないのが残念だけど、確かカバンのポケットに飴くらいはあったはず。

「それは残念」
「なんで?トリック・オア・トリートってお菓子ちょうだいって意味でしょ?」
「敦はそれでいいかもしれないけど…俺はイタズラできる方が嬉しいんだ」
「…お菓子を差し上げるので引き下がっていただけませんか?」
「そんなに嫌?」
「イタズラっていいことじゃないでしょ」

私はちゃんとお菓子を持ってるのにどうしてヤなことされなきゃいけないんだか。

「いいことかもしれないよ?」
「氷室くん、イタズラという日本語はいい意味ではありません。ほら、キャンディー」

無事に発見して手を差し出すも、受け取ってくれる気配がない。

「氷室くん、観念なさいな」
「そうだね…そうするよ」
「ん?」

飴ごと私の手を包んで、私の手の甲に…氷室くんは口付けた。

「ハロウィンに格好つけることはないかなってね」
「ええと…つまり…」
「俺の愛を伝えたいだけですよ」