ハチミツ 「ベルナルド、ハチミツあるかな?」 「ん?嫌いじゃなかったかい?」 「唇が荒れてるからさ」 そういう時、ハチミツがいいという話を聞いたことがある。 「それは大変だ」 すぐに用意してくれた。 「ありが…えーと、グラッツェ」 「プレーゴ」 「プ、プレ…?」 「プレーゴ。どういたしまして、って意味だよ」 「へえ…」 今度使ってみよう。 さて、ところでコレどうしたらいいんだろう? 「塗ればいいのかなあ…」 「それなら俺が」 「えっ!?自分でやるよ!」 「どうして?」 どうして? 「恥ずかしいからに決まってんでしょ」 顔をそむけると、ベルナルドが追いかけてくる。 やめてよー。 「私めにお任せを」 「もー…」 仕方ないなあ。 「口、少し開けて」 「ん」 「いい子だ」 …バカ。 ベルナルドの指…ハチミツが唇を滑る。 あ、意外と良いかもしれない。 トロっとした感触が、刺激することがなくて気持ちいい。 でも…。 「やっぱおいしくないかも」 「舐めちゃダメだよ」 「口に入ってくるんだよ」 しかしコレ、ベタベタになったりしないのかな? 虫が寄ってきちゃったりとかとか? やだ勘弁してほしいなあ。 「うーん、やっぱり我慢できないな」 「へ?」 キスされて、全部舐め取られていく。 「んっ…!?むーっ!!」 やっぱりナカにもいらっしゃいますよね。 だから私はこの味が嫌いなんだってば。 「…っ、はあ、マズ…」 「それは傷付くな」 「ベルナルドが悪い」 「いつも以上に甘い口付けだったね」 そんな話してませんよ。 「しかしあまりに魅力的だったとはいえ早まったな」 「?」 「この指…先に舐めてもらえば良かった」 変態は至極残念そうにハチミツが残る指を見つめていた。 「な…っ!絶対しない!!っていうか、それキスがあってもなくても変わらないし!」 「塗ってあげたお礼、とかね」 「いいです。もう頼みません」 「やり直してあげるから、こっちにおいで」 結構です。 「ベルナルドってやっぱりダメなおじさんだね」 「失敬な」 「もう知らない」 ああ甘い甘い甘いったら。 紅茶でも飲みに行こう。