白昼夢だと誤魔化して



「アルルーゥ!」

「んふ〜おかーさん」



ひしっと意味もなく抱き合う親子。



「毎度毎度飽きねぇもんだぜ」

「飽きるわけないでしょ!クロウにはこの可愛さがわからないの?」

「んふ〜」



この愛くるしさになら、何でも許せてしまう気がする。



「俺にはわからなくもない」

「さすがオボロ!」



伊達にシスコンじゃないわね。



「こんな所にいたの、アルルゥ!」

「あ…おねーちゃん」

「後でお薬を飲みに来なさいって言ったでしょ!」

「や」

「まぁまぁエルルゥ」

さんも甘やかさないでください!」



うーん…どうしても可愛くてなぁ。
エルルゥも可愛いんだけど。



「私はエルルゥも甘やかしたいよ?」

「私はそういうことを言ってるんじゃなくて…あっ!アルルゥ!待ちなさーい!」

「あっ………」



エルルゥは逃げるアルルゥを追いかけて行ってしまった。
お姉ちゃんは忙しい。



「お姉ちゃんて大変だよねぇ」

「俺は兄であることを大変だと思ったことはないぞ」

「お前はな」











今日は珍しく書簡の整理の手伝いを任された。
一つ一つ見ながら棚に戻していく。
ハクオロさんとベナウィの字は見慣れたらしく、判別出来て何だか面白い。



「エルルゥも大変だよねぇ。可愛いけど手の掛かる妹で。たまには誰かに甘えないと疲れちゃうよ」

「エルルゥ様には聖上がいらっしゃるでしょう」

「あれは面倒を見ちゃってる気も…。でも好きなんだから、いいのか」

「貴方には甘える人がいるんですか?」

「は?」



思わず棚に戻そうとしていた手が止まる。



「あなたはエルルゥ様よりも年上です。けれどカルラやウルトリィ様達がいるのに頼らない」

「それ、は…」



カルラはアレだし、ウルトはカミュに忙しそうだし…。



「私ではいけませんか?」

「えっ………」



書簡を持つ手を取られる。
背を向けたままだから、ベナウィには顔色を気取られない、と信じたい。



「あなたにとっては迷惑な気持ちかもしれませんが」

「………」



迷惑なわけ、ないじゃないか。
そんな、だって。



「あ、あの…」

「考えておいてください」



私の手にあった書簡を棚に戻し、ベナウィは行ってしまった。
いつの間にか整理は終わっていたんだなんて、ぼんやりと考える。



「えっと、今…今…」



何が起きたんだっけ?