ダイブ! 一日移動していれば、車に乗っているだけでも疲れる。 はずなのに。 「眠く、ない」 のでちょっとした運動をば。 「………っしょ」 真っ暗でも月明かりがあれば何とかなるものだ。 適当な太さの枝までよじ登り、腰掛ける。 「月見日和だね」 足をぶらぶらさせてみたり。 満月を独り占めって贅沢だけど、ちょっともったいないかも。 「いなくなったと思えば、お前は猿か」 「うわぁっ!?………っ!!」 び、び、びっくりした。 落ちるとこだった。 心臓止まるかと思った。 「さ、さん、三蔵、何で」 「気配を消したつもりだったのか」 「そういうつもりじゃなかったけども。ていうか、いきなり声かけないでよっ。誰かいるなんて思わないし」 「俺はこんな時間に木の上にいる馬鹿がいるとは思わなかったがな」 「…そーですね」 「おい、そこで寝るつもりなのか」 「眠れないからちょっと運動してみただけですよ。木の上なんかで寝れるわけない」 「じゃあ、降りて来い」 そりゃいつか降りるさ。 なんか釈然としないけど…。 「あ」 「あ?」 「無理、降りられないや」 自分でもちょっと驚いた。 「馬鹿か」 「だって登る時は地上からじゃん!怖くなかったんだもん!」 「飛び降りろ」 「…本気?」 「飛び降りろ」 三蔵は同じ言葉を繰り返すだけ。 「受け止めて、くれるよね?」 「お前次第だな」 「怖がってる人間にそういうこと言う!?」 「さっさとしろ」 「………」 せ え のっ。 「「………っ!!」」 「さん、ぞ…ちゃんと受け止めてよ」 これは照れ隠しだ。 「うるせぇ」 結局一緒に倒れこんでしまったんだけど。 受け止めてくれた腕は華奢だと思ってたのに、力強かった。