ある日の授業風景 教える側になって、初めて思う。 先生って大変だったんだなあ。 いやでも、こんな生徒って存在するんだなあ? 教師ってのはいろいろ気苦労は絶えなかろうけど、こんなのを相手にすることがあるんだろうか。 「フン、そんなもの簡単だ」 こんな。 「へえ………?」 こんな。 「猫に小太郎だろう!」 「待てぃ!」 バカ過ぎて殴りたくなるような生徒を。 「なんっでそんなよくわかんない間違いが出来るわけ!?」 「小太郎は猫の世話係だろう!」 「そんな設定作るの禁止!!」 「なんだと!?じゃあ答えは何だと言うんだ!」 「“猫に小判”ですっ!!」 ああ、日本語から教えてるってどうなの。 私は外国語なんか全然できないけども。 だけども。 「ああ、小判だ。ふむ、先生にピッタリの言葉だな」 「翼くん、それ本気で言ってるの?」 「…次の問題に進むぞ」 進むのは私に権限があるんですが。 やる気…があるかどうかはわからないけど、やってくれるだけまだマシか。 今まではことごとく逃げてくれてたわけだし。 「南先生は大変だねえ。こんなのが全部で6人とは…」 「目の保養になるだろう?」 そこじゃねえよ。 が、否定できない。 「そこは認めてあげるから、さっさと問題解きなさい」 「認めるのか」 「何で?認めないほうがいいの?」 実際カッコイイ。 こんなにバカでなけりゃ、ドキドキするって。 まさに黙っていれば、ってヤツ。 「翼くん?」 翼くんはふと微笑んだ。 な、何を企んでるの? 普段は結構不機嫌そうな感じなのに、急にそんな顔するなんて…。 「先生」 「は、はい?」 翼くんの顔が、近付いてくる。 うわ、何?だから何! 「どうして逃げる?」 「つ、翼くんが近付いてくるからでしょ」 アップなんか無理無理。 悔しいけど、もう絶対顔が赤くなってる。 「先生」 真剣な顔で呼ばれて、嫌でも目を見てしまう。 「…くっ、はーっはっはっはっは!」 「!?」 しばらく見つめ合った後、突然高笑いを始めた。 「か、か、か、からかったの!?」 「いや、面白い顔だったぞ、先生」 「こンの…!!私で遊ぶなんていい度胸ね!覚悟なさい、次回はすごい課題を持ってきてあげるから」 …まあ、先生方に頼むんだけど。 「落ち着け、先生」 「あら、とても落ち着いているわ。いつ学校に行こうか今考えているところなの。翼くんの課題は、どの教科がいいかしらってのもね」