あなたは悪魔だから
「…眠い」
珍しく誰もいない。
テーブルで腕を枕代わりに少し寝てしまおう。
「………」
なんだか、地面が揺れている。
私が揺られている。
「おや、やはり目を覚まされてしまいましたか」
「………」
ロノウェ!?
「うぇ、ちょっ、なっ、ええええぇっ!?」
「ぷっくっくっ、落ち着いてください」
「いやっ、何が起きてるの!?」
「あなた様が眠っていらっしゃったので、ベッドへお連れしようと思いまして」
「そんなもん魔法でやりなさいよ!降ろしなさいっ」
「あなた様こそ、魔法でお逃げになればよろしいかと」
うっ。
いや、逃げたいんだけど、その。
ちょっと、嬉しかったり、して。
「様?」
「はっ!と、と、と、とにかくもう眠気は覚めました!」
「左様でございますか」
「だから降ろして」
ああ、可愛くない。
「降りたいのであればご自由に。ぷっくっくっ」
わかってる。
ロノウェわかっててやってる。
「…はあ、こういうのは戦人くんとかにやってよ」
「戦人様を抱き上げろと?」
「違う」
かわいそうだからやめてあげて。
「どうしてあなた様だから、と思っていただけないのですか?」
「え………」
顔が熱い。
「…ぷっくっく」
「なっ…なっ…またからかった!」
「様が素晴らしい反応を返してくださるからですよ」
「こんの…!ベアトの家具でなければ、あんたなんて…」
ベアトの家具でなければ。
じゃあ、私の家具だったら?
「…様?」
「やっぱりあんたは悪魔よね」
「はい?」
「何でもない。眠気が覚めちゃったし、紅茶でも淹れてちょうだい」
「かしこまりました」