ヴォルフラムはやはり、有利を超愛しているらしい。

幸せ者ね、有利。(棒読み)

愛は人を地獄耳にもさせるのです。

いや、“人”じゃないけど。



   真実は砂嵐の向こう



体の中を何か液体が通った。
それは多分ぬるいんだろうけれど、暑さにやられた体には十分冷たかった。



「………」



ゆっくりと目を開くと、飛び込んできたのは太陽ではなかった。



「コン…ラッド…?」

「大丈夫ですか、陛下?」

「本物?」

「はい」



見渡せば、ヴォルフラムも一緒に来ていた部下の人たちもいる。
が、兵士達の顔色がおかしい。
顔が赤いのは暑さのせいだろうか。



「もう少し水を」

「あ、うん」



と、水嚢を受け取ろうとコンラッドを見ると。
唇に水滴が。



「え………」



兵士の赤い顔。
私が飲んだらしい水。
コンラッドの。



「ちょっ、ぅえっ、まさかっ!?」

!」

「はいっ!?」



ヴォルフラムに強い口調で呼ばれて、それどころではなくなってしまった。



「ユーリと兄上はどうしたんだ!」



そうだ。
私がどうしてここにいるかといえば。



「この先の街で、ちょっと面倒なことになっちゃって」

「この先、というのはあちらですか?」

「え…ええっ!?」



砂嵐の向こうに、確かにあの街があった。
もう少し離れたつもりだったのに。



「で、どうしたというんだ」

「私達は街に辿り着いたわけなんだけど、なんか変なとこでね。特に兵士が」

「そんな話は聞いてない!」



…説明下手だったのか、私。



「簡潔に説明いたしますと、有利とグウェンダルは指名手配となりました」

「なに!?」

「それまたどうして?」



理由を言ったら、ヴォルフラムの気が狂ってしまうんじゃないか。



「…よくわからない。でね、今二人は鎖で繋がれちゃってるの。逃げようとしたんだけど、私は落馬しちゃって。
 そのまま一緒に行ってもグウェンダルは二人も護れないと思って、私はコンラッド達と合流しようと逆走したってわけ」

「…相変わらず無茶をするな、あなたは」

「く、鎖…!?なぜだ、なぜ兄上とユーリが…!」



驚愕している三男からそっと離れて、コンラッドを目で呼ぶ。
そして小さく真実を伝えた。



「…あのね、有利とグウェンダル、駆け落ちに間違えられちゃったの」

「駆け落ちぃ!?」

「げっ………」



なんという地獄耳。



「おい、一体どういうことだ!なぜ兄上とユーリが」

「知らない!間違えられたんだからしょうがないでしょっ!」



食って掛かってこようとするヴォルフラムをコンラッドがガードしてくれた。
っていうか、しゃべる度にパラパラと砂が落ちるヴォルフラムの頭がすごく気になる。



「とりあえず、俺が行ってみます」
「ぁ………」



反射的に、コンラッドの服を掴んでしまった。



「ご、ごめ…」

「大丈夫、俺はちゃんと戻ってくるよ」



その後、戻って来たコンラッドに詰め寄ったヴォルフラムはまたも嫉妬に狂うのであった。