暑さは人を殺せるものである。
熱中症やら脱水症状やら、よくわからないけど。
私は多分それなりにヤバイ状態だ。
例を出すなら、魔剣に体力を吸われていた時より厳しい。
園児の落書きも“人間”の目には人相書きなのか
「休める場所があればお教え願いたい。水と食糧も分けてもらえれば助かるのだが」
「金シだイってとこだ」
有利に手を引かれてついて行く。
「ここにいろ、迂闊なことはするな」
グウェンダルはお店に入って行ってしまった。
私は通りの端に腰を下ろす。
「、ほんと大丈夫か?」
「はは…結構、駄目、みたい」
街に入ったところで暑さはおさまらない。
「旅の人」
女の人の声。
「そこは暑いでしょ。お連れさんを待つなら教会の中に入るといいよ」
「…涼しいところに避難するくらいならいいか。、どうする?」
「…私は、ここに座ってる方が、ラク。動きたくないし、二人とも、いなくなればグウェンダルが…困るし」
「そっか、じゃあおれもここで待つ」
「なに、言ってんの。二人で具合悪くしても、困る。行って」
「…わかった。行ってくるよ」
とりあえず何だ。
クーラー?プール?水風呂?
何でもいいから冷たい液体が欲しいな。
体がだるくて仕方がない。
「おい、あいつはどうした」
「おかえり…有利なら、そっちの教会に…うわぁっ!?」
腕を掴まれたと思ったら、そのまま引っ張られる。
フォンヴォルテール卿は教会へ突進。
そして扉を蹴破った。
「出ろ!」
「有利!?」
「えっ!?で、出ろって」
教会の中で、有利は兵士達に囲まれていた。
行かせるんじゃなかったってことか。
こちらに来ようとするが、有利は捕まって動けない。
「やっぱりな」
「やっ、やっぱり、なにっ」
男達に促されて、私とグウェンダルも教会の中に入ることになった。
涼しさに体が少しラクになる。
「イくら魔族の武人でも、教会内ジゃ魔術は使えねぇだろ。神様のお力に満チてるからな」
「何が望みだ、金か?」
グウェンダルは明らかに怒っている。
彼を怒らせようとは、いい度胸だ。
「もチろん金は手ニ入れるが、そっちの懐からジゃねえ。もっと大金を稼ぐのさ。
首都の役人に突キ出せば、賞金がごっそリ入ってくるからよ…お前等、これだろ?」
男はポスターを広げた。
「ええっ!?おれ立候補なんかしてないよっ!?」
一瞬、妙な間ができた。
有利はどうしてこう、天然なのか。
「シらばっくれんな!そっくりジゃねえか」
ええっ!?と三人で驚く。
幼稚園児の落書き程度でモデルを特定できようとは。
「手配。背は高く髪が灰色な魔族の男と、少年を装った人間の女。この者達、駆け落ち者につき、捕らえた者には金五万ペソ」
「ペソ!?」
有利はどうしてこう。
「駆け落ち者だと?私達がか?」
…ところで、“達”の対象はどっちですかね。
「駆け落ち者って何?ひょっとして丼物のメニュー!?それとも親に結婚反対されて、手に手をとって逃げましょうってラブあんど逃避行のこと!?」
どう考えても後者である。
と、イクラもとい赤髪の兵の一人が…有利の胸に手を突っ込んだ。
「ぎゃ」
「随分と乳のない女だな。これから成長すんだとしても」
あれえ?
「まあ顔が可愛けリゃ、坊やミてえな女が好ミって奴もイるんだろうさ」
「ちょっと待ったー!女っていったらどう考えても私でしょうがーっ!!」
「お前は見るからに女ジゃねえか」
少年を装った、って言ってたっけか。
しかも駆け落ちといえば二人。
その時点で除外されていたようだ。